図書館で本を探したいだけです。

一色 サラ

赤ちゃんとママ

 栞はベビーカーを押しながら、図書館の本棚をみながら歩いていた。どの本を見ても、しっくりこない。

「うぁああー、うぁああー」

 ベビーカーの中に座っている、8カ月になる息子の大翔はるとが大泣きしてしまった。どんだけ、ベビーカーを前後して動かしてもあやしても、泣き止むことはない。

「どうした?」

 ベービーカーから大翔を抱き上げる。そうすると、すぐに泣き止んでしまう。なんで、ベビーカーに乗っていることが嫌なのだろう。それすら、栞の神経をすり減らす。

 それでも、目的の本を探しながら、本棚同士の通路で立ち止まる。これだと思って、本を取ろうと、本棚に手を伸ばす。やっぱり抱っこしてると本が取れない。大翔を床に置いて本を取ってしまった。大翔はそのまま通路をハイハイしながら、進んで行く。

「どこ行くの?」

 大翔に声をかけながら、本の内容が気になってしまう。棚に一旦、本を戻し、進んで行く大翔の元に行って、抱っこする。

 静まり返った図書館内で、疎外感を感じてしまう。また本棚を眺める。本に手を伸ばしてたくなって、大翔を床に置いてしまう。そして、またハイハイしてどこかへと進んで行く。その繰り返し。どこか今の状況から、栞は目を背けるように、欲しい内容が書かれている本を探していた。

「こんな広いところ来たことないね」

 周りに人に聞こえるような声で、言い訳するように言葉が出てしまった。でも事実だ。マンションの狭いスペースでは長い距離はハイハイすることはできない。

「なんで、子どもの本じゃなくて、大人用の本のところにいるでしょうね」

 そんな声が微かに聞こえてきた気がした。幻聴かもしれないと思ったが、栞には、はっきり聞こえた。周囲を少しみたが、マスクをしていて、誰が言ってるのかは分からなかった。

 栞は育児に関する本を一生懸命、探していた。これは大翔とのためなのに、それすら探してに来てはいけないのだろうか。絵本を見に行けという視線を感じてしまう。

「元気な坊やだね~」

おばさんが声をかけてきた。

「はい、そうですね」

少し救われたと思った。

「でも、ここは図書館だから」

その言葉が胸に刺さって、また心が沈んでいく。

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図書館で本を探したいだけです。 一色 サラ @Saku89make

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