第108話 終わりに
そんなわけで、身を切られるような思いをしながら、診療所を離れることになった。子供の頃から信頼していた私や私の家族のかかりつけ医。医師になることを強く決意するきっかけとなった場所。ここに戻るために、全力で医学生時代、研修医時代を駆け抜けたこと。
医師として赴任してからも、前述のように全力で頑張ってきた。そのような場所を離れざるを得ないのは本当につらかった。
ただ、道楽で医者をしているわけではなく、この仕事で妻子を食べさせていかなければならない。なのでそれができないほどの給料を提示されれば、いくら診療所に愛情を持っていても、離れざるを得ない。
私の退職の3か月前に、有床診療所であったが、病棟を閉鎖した。それと同時に北村先生や、複数の職員が退職した。私が退職した後は、一度も診療所を訪れてはいないが、ホームページを見ると外来診療枠はかなり縮小しているようである。常勤医一人では、それが精一杯だと思う。源先生は、先生なりのお考えで上野先生から引き継いだ診療所を全力で守ろうとしている。それは信じている。
たくさんの患者さんであふれ、深夜にも複数の患者さんが来られた時代を知っている私や、古くからの診療所スタッフから見れば、「盛者必衰」なのかもしれない。
給料の締め日が15日だったので、私は15日まで勤務し、退職。その翌日からは新たな職場で勤務を始めた。あえて休みは取らなかった。仕事の勘を失いたくはなかったからである。
保谷君、町のお医者さんとしてがんばる! 川線・山線 @Toh-yan
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