君と僕のおとぎばなし

@otootoshi

第1話 悲しいおとぎばなし

御伽噺にずっと幸せなものは無い




桃太郎でいう最初襲われた村。花咲かじいさんでいうずるいじいさん。舌切り雀の雀。他も同じようにだ

襲われた村は死人が出たかもしれない。ずるいじいさんも魔が差しただけかもしれない。舌切り雀は切られた時点で心中お察しである


しかし、御伽噺は人生よりよっぽど幸せである。なぜなら必ず幸せな場面があるからだ

浦島太郎でさえ、最後こそじいさんになってしまったが、竜宮城豪遊権を使いまくったのだ

人生はどうだろう?幸せな時などあるだろうか?僕はハッキリ言える。ない

他の人はどうだろうか?あるにしてもあまりにも幸せの部分が少ない気がする

幸せな時を思い出して、「幸せな時もある!」という人もいるだろう。でもそれは、幸せな時間が少ないからこそ思い出せるのである


現に悲しい時、苦しい時。黒歴史といえるのもそのひとつだろう。思い出しても思い出してもキリがないはずだ


このことから私は人生とは悲しい御伽噺であると思う


立花 冬樹





「…で、お前ははどんな気持ちでこれを書いたんだ?立花。確かに今年の春休みの作文の内容は『人生とは』とかいうクソ重い内容だ。しかし、どれだけ探してもこんな内容のやつはいない。ある意味才能だな」


そう言うのは僕の担任で国語教師を受け持つ葵 彩(あおいあや)先生である。彩とかいう可愛いらしい名前のくせに爽やかクソイケメンだ


「あら、立花くん。また葵くんに怒られてるの?」


「上田先生。学校では先生とつけてください。あと、怒ってるわけじゃないですから。彼の作文の内容の素晴らしさを議論してただけです。」


そうして表れたのは僕らの英語の担当教師であり、立花先生と幼なじみであるらしい。上田 夢(うえだゆめ)先生だ


「ふーん。どれどれ…」


「僕も悪くないと思ったんですがね?ありきたりなものばかりよりも、こういうのがあった方が面白いでしょ?どうせ最優秀賞に選ばれて貼り出される訳でもないし、遅れて出したわけじゃないですしね。とりあえずなんで僕呼び出されたんですか? 」


「あぁ、その事なんだけどね。君のその素晴らしい考えを使ってお願いがあるんだ」


「嫌です」


「まだ何も言ってないだろ?」


「嫌です」


「ハハハ!2人ともそれ漫才?笑」


「違う。はぁ…よし、立花。着いてきなさい」


そう言って、僕と葵先生は職員室を出て、普段は行かない校舎のすみのすみ。中々広い高校であるため。高一終わってなお行ったことないところがあるくらいなのだが、5階建て校舎の4階のすみ


そこには、音楽室と書いてあった


「そういえば立花。君は楽器弾けるかい?」


「音楽は好きですよ。ギターを中学の時やってました。高校では全くですが…」


「それでいい。やってるだけでいいんだ」


謎の会話を不審に思い、僕らはそこに入った


二重扉の1枚目を開けると、ピアノの音が零れてた。そして、微かに歌う声が聞こえる


とても綺麗な音だった


ドアノブに掛ける手が思わず止まった


ガラスのように繊細で。それでいて、力強い声


「しっかりノックして入れよ」


そう言われて、3回ノックした


音が止まった


「どうぞ」


ドアを開けた


そこには、夕日に照らされたピアノ。そして、その椅子に座る少女。髪が肩くらいまであり、活発なのか、おしとやかなのかパッと見では分からない。しかし、輝いてるように見えた




とても、とても、輝いていた




「どうしました?葵先生。彼は?」


「彼は立花冬樹。僕のクラスの生徒であり、君と『作品』を作るパートナーだ」



「「…は?」」



これが、僕と彼女。山口春華(やまぐちはるか)との出会いである


そして、これがおとぎばなしの始まりである


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