第55話 世界へ旅に出ます
レグルスを討伐してから1年が過ぎた。
アルファルド王国の魔獣は日に日に数を減らしていき、いまでは一般市民でも撃退できるほどの魔獣しか残っていない。リュカオンに聞いたら、アルファルドはレグルスの縄張りで、ボスがいなくなったので増えることがなくなったそうだ。
他の国はまだまだ魔獣の脅威にさらされている。そのためハンターたちは続々と他国へと移住していた。
プロキオンのギルドもほぼ解散状態だ。近々ギルドの運営について、大きな改革があるらしくエリアさんはギルド長として最後の仕事に励んでいる。
「エリアさん! お元気でしたか?」
「カイトか! よく来てくれたね。あぁ、今日は家の処分をしに来たんだっけ?」
「はい、ムルジムさんも南のサムエル国に行ったし、オレたちも旅に出るので……」
「そうか……ますます淋しくなるな」
ムルジムさんが、ハンターとしての仕事がないとこぼしていたので、家はもう処分するので好きにして構わないと伝えていた。今日はその家の処分をするためにプロキオンに来ていたのだ。
そしてオレたちは、魔獣が減ったことで特務隊の仕事も激減したので、仕事を辞めて魔獣討伐の旅に出ることにしていた。国王にはだいぶ渋られたけど、なにせ仕事がないんだから仕方ない。
贅沢したとしても、いままで貯めた金でしばらくはのんびりできる。いざとなったら、ハンターの仕事で稼げるし問題ない。
「エリアさんもギルドが解体されたら他国へ行くんですか?」
「そうだなぁ、一か所でジッとしてるより動き回った方が性に合ってるからね。僕もハンターやりながら旅に出たいとは思ってるよ」
「じゃぁ、どこかで会ったらご一緒してください」
「もちろん! あ、それと、話変わるけど、僕ついに彼女ができたんだ」
「え! 本当ですか!? どんな人なんですか?」
「カイトの知ってる人だよ」
オレの知ってる人……? 誰だろう? 全然思い当たらない。
「ララ。特務隊にいたララだよ」
「ララ……? あのララですか? あぁ……なるほど」
「実はさ、カイトの結婚式に出たときに、すっごい毒舌の子がいるなと思って見てたら、まさに僕の好みど真ん中だったんだよね。あれは運命だったな」
結婚式のあとの立食パーティーで、エリアさんが何故好きな人に振られるのかという話題なった。
エリアさんはこの見た目で、幼いころからモテまくっていたのだが、あまりにも必死に言い寄ってくる女に嫌気がさして受け入れられなくなっていたらしい。
そんなある日、自分に興味を示さない女性に会って、すごくホッとしたと言っていた。それからは、自分に興味のない女性しか受け付けなくなり、そういう女性は婚約者がいたり恋人がいたりで、当然好きになっても振られるばかりだったという事だ。
「ララのオリヴァーへの対応がいい感じにドライでね。ララに話しかけたら、同じようにドライな対応だったから一気に恋に落ちたよね」
「まぁ、エリアさんとララが幸せならよかったです。あ、結婚式には呼んでくださいね」
「結婚……そうだよね、結婚か……プロポーズしてみるか……?」
そのあとララへプロポーズするか真剣に悩みだしたので、オレはそこそこで切り上げてきた。どうかふたりで幸せになって欲しい。
結婚式といえば、国王もランディとしてお忍びで参列してくれたんだ。エルナトさんとの掛け合いは新鮮というか、面白かった。いつか聞いたエルナトさんの舌うちも、気のせいじゃなかったと理解した。
「カイト!」
愛しい人の甘くて爽やかな香りが風に乗って、オレに届いた。
「リナも挨拶終わった?」
「うん、宿屋の女将さんが今度帰ってきたらカイトも一緒にって言ってたよ」
「そうか、その時は世話になろう」
母さんと暮らした家は、いつ帰って来れるかわからない旅なので処分した。
オレは気づいたんだ。大切なのは形あるものだけじゃなくて、それに込められた想いなんだって。オレがどこにいても、プロキオンが故郷であることに変わりはない。
この街で辛いことも悲しいこともたくさんあった。
でも、それよりも多くの楽しいことや嬉しいこともあったんだ。
今のオレは間違いなく幸せだって言える。
だけどまだ最終目標の魔獣の殲滅ができていないから、のんびり旅をしながら世界中を回ることにした。
リナとウラノス、リュカオンにも相談したら、
「カイトが行くならついて行くって、いつも言ってるでしょ?」
「世界中のいろんなキラキラした景色が見れるんですか!? 行きます!!」
『我の目的は魔獣どもの殲滅だ。ついでに幻獣や他の魔物も殲滅するか?』
と、割と乗り気だった。……ちゃんと考えてるんだろうか? 特務隊に入るときも即決じゃなかったか? まぁ、みんなが納得してるならいいんだけど。
アトリアで借りてた部屋も引き払って、今日はプロキオンの家も処分して、これで身一つになった。
そろそろ、ラルフに餌付けされたウラノスが迎えにくる頃だ。最後の晩餐にフルコースを食べさせてもらうと、ウラノスはキラキラした瞳で話していた。
ちなみにこの1年で何回か黒狼にラルフを乗せたら、ものすごく喜んでた。ありがとうって言って、花が咲くみたいに満面の笑顔になるんだ。……また機会があったら乗せてやろうと思う。
特務隊のメンバーも残るのは隊長とクレイグ、ファニーとラルフだけだ。あとは他の国に行ったり、カーネルハーンでエルナトさんの手伝いをしている。
こうしてオレたちは世界へと旅立った。
少しずつ変化していく世界で、みんな幸せになろうともがいている。奪われないために強くなりたかった。大切な人を奪った魔獣が憎くて殲滅したいと思った。
いまは、大切な人たちを守るために強くなりたい。そして、その笑顔を守るために、その元凶をなくしたいと思ってる。
同じようで全然違う。だけど、大切な人たちのためなら、オレはどこまでも強くなれる————
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これにて完結となります。
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追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので、余裕で無双できました。だからお前らが落ちぶれようが、どうでもいいわ〜 里海慧 @SatomiAkira38
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