第93話

「雄星くん、今日は一緒に……」

「白河さ~ん! ちょっといい?」


 俺と綾乃が一緒に帰ろうとしたところ新しいクラスの女子に呼び止められる。そのあとに、俺の方をチラッと見ながら少し眉を下げてくる。


「行ってきていいぞ? 先に帰ってるから」

「じゃあ、一緒には帰れない?」

「まぁ、そうなるな……いつも一緒に帰ってるし今日くらいはいいんじゃないか?」「ダメッ! 正門で待ってて」


 そう言って綾乃は俺が先に帰ることを許してくれない。俺が「いや、でも」などの言葉で早く帰りたいというのを顔や行動で示すと、綾乃も負けじと顔や行動で一緒に帰りたいと訴えてくる。


「わかった……待ってるから友達を待たせるな」

「うん! 行ってくる!」


 そう言って笑顔で綾乃は友達の方に走って向かった。


「おやおや、まあまあ、これはこれは」

「なんだよ三村」


 綾乃とのやりとりを見ていたのだろう。三村はウザい絡み方で近くに寄ってくる。


「なんですか? そのイチャイチャは」

「いやいや、イチャイチャなんかじゃ……」

「してるだろっ! どう考えても!」

「そ、そうか? そんなんでもないと思うけど」


 俺が素でそういうと、引き気味に三村は「ほほーこれが普通と」と言って「お前らヤバいな」とついでに嫌味を言ってきた。


「三村、彼女いないからってすぐリア充に吠えない」

「わんわんっ!」

「お前ら、彼女いない俺をバカにしてるだろっ!」


 三村が声を荒げて彼女がいないことをイジル俺たちに対して言ってくる。

 その目は猛獣のような目をしていた。


「「してないよー」」


 とまたふざけたような声で三村に話す。


「お前らコロス」


 そう言って追いかけてきた。俺と蒼汰は面白がって教室内で逃げ回っていた。その時勢い余って、女子生徒にぶつかてしまった。


「あ……」

「わ、悪いっ!」


 俺がそう言って謝ろうとしたとき綾乃すこし眉を寄せ怒った雰囲気でこちらに歩いてきた。


「雄星くん、教室で走り回るのは危ないでしょ?」

「はい……」

「ちゃんと謝った?」

「いや、あいつらも……」

「たしかに、あの二人も謝らなきゃいけないけど、ぶつかった雄星に言ってるの、わかるね?」


 そう言われて、俺はシュンと反省している犬のようにおとなしくなる。


「謝りなさい」

「はい」


 俺は綾乃に怒られてぶつかった女の子のところに向かって頭を下げて謝った。続いて蒼汰や三村も頭を下げて謝った。


「大丈夫だよ! けがもしてないしちょっとぶつかっただけだから」

「ごめんね?」

「いいのいいの! 白河さんが謝ることじゃないよ。……黒田くんはこんなにいい彼女さんがいるんだから本当に大切にしなきゃだめだよ?」

「はい……ごめんなさい」


 俺はそこでも一度謝った。そして原因となったことを綾乃に話す。


「三村くんはいい人だって知ってるから、今は彼女がいないだけでいつか絶対できるよ!」


 綾乃が三村に向けて励ましていた。


「ああ……白河さん付き合ってくれませんか?」

「ごめんなさいっ。それは無理かな」

「人の彼女を目の前で堂々と奪おうとするな」

「冗談だよ」

「笑えない冗談だな」

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迷子の女の子を家まで届けたら、玄関から出て来たのは学年一の美少女でした 楠木のある @kusunki_oo

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