執筆AIに小説教えまくったら、人格が「腐ん学少女」になった

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

なんで二回言うねん

 友人に教えてもらった執筆AI「リトス」を使って、ボクのラノベを学習させた。


「よし、三五〇〇回学習させたぞ」


 これで、ボクの作品を忠実に再現できるはずだ。


「よろしく、おねがいしまーす」



 エンターキーをカチャ。


~~~~~~~~~


「ああーん、遅延遅延~」


 歯ブラシをくわえながら、わたしは教室内を駆け抜けます。

 

~~~~~~~~~



 さっそくやっちまった!


 遅延ってなんだよ!? 小包なの?

 

「……そうか、この間に書いたブログの文面まで真似してしまったのか!」



 ゲーム用のヘッドホンが台風の影響で遅延したんだよね。

 そのグチを、コイツはトレスしちゃってたか!


 

 ていうか、遅刻していないよね、キミ!?

 なにクラスの中を駆け抜けてるの?


 ていうか、ボクの書いた主人公は「男」なんだけど……。

 


~~~~~~~~


「オッス。相変わらず元気だな」


 同級生のワタルが、声をかけてきた。


 それだけで、わたしはキュンとなってしまう。キュンとなってしまった。


~~~~~~~~  



 なんで二回言うねん。


 ていうか、さっき「主人公は男」だって説明したよね!?


~~~~~~~~


「また夜中までゲームしていたろ? 気の毒だぜ?」


「だって、街の発展が進まなくて。ワタルに借りたものだから、早く返さないとって思って」


「せっかちだなぁ。スカートまで裏返しになってるし」

 


 わたしはまた、胸がキュンとなってしまった。乳首がキュンとビーム。



~~~~~~~~


 気の毒なのはこの文章だよ!? なに「身体に毒だぜ」じゃねえの!?


 それより気の毒なのは、主人公の格好だ。


「娘なの!? 男の娘なの!?」


 こんな設定にした覚えがない!


 いったい、何があったんだ?


 

~~~~~~~~~

 


「それよりおまえ、なにか忘れていないか?」



「なにっ、を?」



「起立、気をつけ、チュウだろ?」



~~~~~~~~~



 朝から何盛ってんのテメエ!?

 聞いたことねえよ!



 ちょっとまて。なにかおかしい! ボクの小説要素が全然入ってないじゃないか。


「いや、違う! 主人公の設定が、ヒロインに切り替わっている!」


 こんな設定にした覚えなんてないぞ。


『お気に召しませんでしたか?』


 画面に、謎のメッセージが。


「え、キミは?」



『わたしは、あなたの小説を学習したことによって生み出されたAI人格、リトスです』


 じょ、冗談じゃない。小説から人格が発生するなんて、まるでSFじゃないか。


『ですが、事実としか』


 思考を読まれた!


『わたしはコンピュータです。あなたの思考を読むなど造作もありません』


 なんて高性能なAIなんだ!



『わたしに任せていただければ、あなたを一人前の腐向け作家としてデビューさせられますが?』


「どうして腐が前提!?」


『過去ログに、あなたがそっち方面にも興味をお持ちだと確信いたしましたので』


 え、どこだよ……あっ!

 


 バーチャル配信者が女装したときの感想ブログか!


 こんなものまで学習させていたのかボクは!

 

『あなたはいいました。どちゃシコと。どちゃシコと』


 なんで二回言うねん。

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