時空間エネルギー管理組合<パワー>

コアラ太

罪状:魔法の不適正使用につき

 コンコン!


「魔法の不適正使用により、被告人ケイトを3000万年の強制労働に処すこととする!」


 ローブを着た骸骨が高台からこちらを見下ろしている。はっきり言って状況がわからない。

 ここは地獄なんだろうか? たくさん魔族を殺したから、その裁判を受けているのか?

 とりあえずここから脱出しよう。

 飛行魔法と時空魔法を使えばすぐに抜けられるだろう。


「む。まだ罪を犯すつもりか! 魔法は封印させてもらう!」

「そんなこと出来るなら……魔力が動かない?」

「これだから魔力が多いだけの下手くそは嫌なのだ」

「俺が下手だと!? 賢者とまで言われた俺が!」


 ヒラヒラと手を払って行けと指示してくる。むかつく骨だ。

 いつか灰にしてやる!



「などと思っておりましたが、今では全良な一職員として働いております。皆様もやりがいのある仕事になりますよ」

「うるせー!」

「早く元の場所に返して! 魔王をまだ倒せてないの」

「勇者をぶっ殺すんだ!」

「壊した星を作り直したいんだが?」


 やかましい人たちです。


「お黙りなさい! あなた方の珍妙な魔法でこちらは迷惑しているのです! そこまで文句を言うのなら、早く仕事を終わらせて刑期を減らしなさい」


 うるさい新人は、やはり傀儡魔法パペットで強制労働させるのが一番だ。

 今日も騒がしい我が職場は、魔法仕分け課。

 あちこちの世界からエネルギー干渉を受け、その配分の調整を行っている。呪文詠唱があれば、熱や物質の移動を行い。魔力操作であれば、その力に見合ったエネルギーを惑星間や世界間で移動させる。

 ここにいる者の大半は刑罰を受けている者たちで構成されている。


「3333。そいつらが新人か? 罪状は?」

「全員時空魔法の使い手ですよ。言わなくてもわかるでしょ」

「時空間にゴミ落としやがった奴か! かぁー、ポイ捨て連中かよ」


 新人どもはよくわかっていない。俺が来た当初もわかっていなかった。このまま知らずにというのも可哀想なので、こちらから教えてあげよう。


「4343番。君の世界ではアイテムボックスと言いましたね」

「それがどうした」

「君の使った時空収納魔法は、1億3千番代の世界だったから……ここですね」


 ニュニューと黒い穴に手を突っ込み、4343君の荷物を取り出すと、気色悪い剣が出てきた。


「趣味が悪いですね」

「そ、それを仕舞え! 死ぬぞ!」

「人の生命力を奪うとはけしからん剣です。そんなものは消してしまいましょう」


 デコピンを一撃入れると剣が折れた。


「な、なんだと」

「こういう呪い付きとか他の世界にしまってるんですよ。良い迷惑です」

「違う世界? 覗き込んだがそんなもの見えなかったぞ」

「当たり前です! 肉体を持ったまま見たり行ったりできるわけ無いでしょうが!」


 ある者は地下へ空間を繋ぎ、別の者は宇宙空間に。一人だけ我らが次元の狭間をゴミ箱として使ってた者もいた。それを一つ一つ取り出し、映像付きで見せながら、たんたんと説明する。彼らがようやく理解したところで、リーダーが口を挟んできた。


「そろそろ仕事の話に移れ」

「あ! 失礼しました。それでは皆さんの仕事をお伝えします。日々、様々な世界で時空間を超える超パワーが使われています。皆さんにやっていただくことは、エネルギーの発信箇所と着信箇所を無理なく繋ぐことです」


 私の後ろでは、歓喜の声を上げて働く職員たちがセコセコと動いている。


「3657番。中惑星半壊程度の放熱魔法あり!」

「座標、勇者ポロンから熱量を吸い出します。転送確認! 惑星外の熱量を再度勇者ポロンへ転送。完了しました」


「4891135番。これは……歌魔法を魔力操作でやっている! 下手くそが! えーっと、これは魔法型111–83か? いや、112–45!」

「はっきりしろ! くそ。歌魔法じゃくて呪歌かよ。それなら邪神ハリセンボーから吸い出し開始!」


 これが日常。私が初めて見た時は阿鼻叫喚の光景に驚いたものです。


「なんだこれ」

「あれは! 大賢者マサツグじゃないか! なぜ縛られているんだ!?」

「あんなすごい魔法を……」


 モニターを見る時間などありません。

 意識をこちらへ戻しましょう。


 パンパン!


「はいはい。こちらも忙しいので仕事に移りますよ! えっと、次の休憩は30日後ですね。では、配置に案内します」

「た、助けてくれー!」

「嫌だー!」

「私は帰るわ!」


 逃げられるわけ無いでしょう。帰り道なんて無いんだから。

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時空間エネルギー管理組合<パワー> コアラ太 @kapusan3

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