第47話 体育祭での種目決め

 昨日は文化祭だった。


 文化祭と言っても、ずっと屋上で話し込んでいたため、特別何かあったわけではない。

 それに別に屋上に行ってサボっていたというわけではなく、一緒に回ろうとしていた人たちがあまりにも人気すぎて避難していただけである。


 学年三大美女と学年一人気な男子。

 その中に俺が入った五人で回ろうとしていたのだが、俺以外が人気すぎるのだ。


 結局ずっと屋上から動けないまま、何事もなく無事に文化祭は幕を閉じた。



「昨日の体育祭、お疲れ様でした。今日からは切り替えてに向けて頑張りましょう!」


 文化祭が終わり、早くも次は体育祭のための練習が始まる。

 そのためクラス委員長であり、友人である吉田祐介よしだゆうすけが体育祭における種目決めをするために、教壇に立っている。


「それでは早速種目を決めていこうと思います――」


 俺としてはあまり目立たない種目に出たいところだ。

 昨日の文化祭とかでも色々と目立ってるし、これ以上目立ちたくないのである。


「まずはリレーから。今回のリレーは希望制ではなく、足が速い順で決めようと思います――」


 希望制じゃない、だと……!?


 リレーを走る人は、クラスで自由に決めることが出来る。

 そして男女四人ずつを選抜し、男女が交互になるように走ることがマストだ。


 昨年はクラスの全員が体育祭はどうでもいいと思っていたため、足が速い順ではなく立候補で走る人を決めた。

 そのため俺としても、最高な形で体育祭を楽しめた。


 しかし、足が速い順でリレー走者を決めるとなると話は別である。


「足が速い順だと……九条くじょうね。その次が――」


 そう、こうなるから足が速い順なのは嫌なのだ。


 俺は今としては帰宅部だが、中学の頃は短距離専門で陸上部に所属していた。

 意外に見えるかもしれないが、これでも当時は県内でトップクラスの速さを誇っていたものだ。


「女子は……桃井ももいさんが一番で――」


 そして幼馴染である桃井美羽ももいみはねもまた、中学の頃は俺と同じく短距離専門で陸上部に所属していた。

 あの時はよく二人で練習していたよな……


「今言った八人にリレーをやってもらいたいんだけど、いいかな?」


 この吉田の問いかけに反論を持つ者はいなかった(そのせいで俺も反論出来なかった)。

 一年の時のクラスとは違って、どうやら皆が皆体育祭へのやる気があるらしい。



 最終的に俺はリレーの他に徒競走、借り物競走、綱引きをやることが決まった。

 本当は徒競走もやりたくなかったのだが、これもまた足が速い順で決まったため、確定で走ることになったのである。


「じゃあリレーだけど、どういう順番で走ろうか」


 無事に何事もなく体育祭での種目決めを終え、リレー走者に決まった八人で集まっていた。


 その中には俺と美羽だけでなく、吉田と柊木ひいらぎさんもいる。

 ちなみに吉田はクラスの男子の中で二番目に速く、柊木さんは女子の中で二番目に速いらしい。

 文武両道かつ容姿端麗だなんて、本当に羨ましい限りだ。


「女子から走って最後は男子でしょ? それなら一番速い人を最後にして、最後の最後で追い上げる方がいいんじゃない?」


「そうだね。僕もその意見に賛成だけど、皆はどうかな?」


 吉田が賛成して、反論する人などこのクラスには存在しないだろう…………ってことはまさか!


はるがリレーを走る時って、いっつもアンカーだよね〜」


「……ぁぁぁあああ!!!」


 アンカーは一番目立つ。

 絶対にやりたくない。


「よ、吉田! アンカーは吉田がやってくれ!!」


「え〜? 晴アンカーやらないの〜?」


「僕にアンカーは荷が重すぎるよ……ということで九条くん、アンカーよろしくね」


 …………まじか。

 名前は知らないが、リレー走者に決まった他の男子に変わってくれと頼んでも、誰一人として変わってくれなかった。


「晴〜、もう諦めな? 私がバトンタッチするんだから、別にアンカーでもいいでしょ?」


 並び順はこう決まった。

 最初の男女四人は名前が分からないため省略させてもらうが、五走から順に柊木さん、吉田、美羽、俺だ。


 確かに美羽からバトンパスを受けるが、出来れば俺は吉田が走る六走がよかった。

 アンカーじゃないからあまり目立たないし、何より柊木さんからのバトンパスを受けることが出来る。

 それでかっこいい姿を見せたい……と思ったのだが、その願いはどうやら叶わなかったようだ。


「いつもそうだしな……わかったよ。アンカーやるよ」


 俺と美羽が同じチームでリレーをするとなると、毎回美羽→俺の順で走ることになる。

 別に嫌ではないし、足の速さで決まっているから仕方がないが、少しは違うパターンで一度走ってみたいものだ。


「やった〜!」


 美羽は両手を上げて喜んだ。

 どうしてそんなに喜ぶのかは分からないが、今年の体育祭は皆で一位を取れるように頑張ろう、そう思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魅力的な義妹と幼馴染に「好きな人ができた」と伝えてみたら、なぜか急に俺を取り合い始めたんだが。 橘奏多 @kanata151015

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ