冴えない凡夫がギリギリの博打に挑む。

順風満帆かつ万全の人生を謳歌していた男「竜胆」が、交通事故に巻き込まれて死亡してしまうところから物語はスタートします。
いわゆる「異世界転生」的物語の冒頭なのですが、この物語では異世界に転生するのでは無く「謎の女神」の力で過去に飛ばされた上、自分と同じように不慮の死に巻き込まれた若者たちと、それぞれに与えられた「才能」及び「自身の復活」を賭け、特殊ルールにてバトルを行い、最後の一人になるまで戦い続けるという――いわばデスゲーム的物語が展開されるという、そんなお話となっております。

しかしこのお話は、主人公(あるいは語り手)である「竜胆」が直接戦うのでは無く、過去の世界にて出会うように仕組まれた「特定の相手」を上手く誘導し、デスゲームに参加させた上で勝負に勝たせるという、なかなかに難しい枷が設けられており、しかも竜胆が出会った相手は、誰が見てもどう見ても全く冴えない、下の下としか思えない「小太り丸顔のフリーター男・シンゴ」だったという、果たしてこんな冴えない凡夫頼みで勝負になるのかという、不安しかない状態でバトルに巻き込まれて行きます。

ちなみに物語冒頭に登場する「女神」が設定したバトルは「参加者の合意が得られない勝負は成立しない」「定期的に勝負を確定させねばならない」という厳しい枷があり、その為、暴力による一方的な搾取や逃亡は行われないのですが、そのルールを適切に把握した一人の男が、圧倒的財力を背景に「特殊なサイコロ博打」による一大生き残りゲームを考案、同じように戦わされる運命を背負った者たちを集め、お互いに納得出来る「博打勝負」を行うよう持ち掛けるのでした。

結果的に「竜胆」と「シンゴ」の二人は、その男の目論見に乗る形で特殊サイコロ博打バトルを開始するのですが、ここで冴えない男・シンゴの真価が発揮されるという感じで、果たして今後、どのような博打バトルが展開されるのか、そして竜胆は復活できるのか、シンゴはどうなるのかという、他にも細かな見どころが用意されており、非常にワクワクさせられる物語です。

軽快なノリでサクサクと読める上、奇妙な言語感覚と軽妙な話運びが楽しい、とても良い感じのお話です。
※23話までを読んだ感想です。