終章:踊るように季節は巡る

 ――冥界の食物を口にしたものは、冥界に縛られる。


 冥界のザクロを食した娘神は、一年の三分の一を冥界で過ごすこととなった。


 地上においては春の乙女コレーとして、春をもたらす。

 冥界においては冥王の后ペルセポネーとして、冬をもたらす。


 母の愛も、冥王の愛も――娘は、まさしく欲しいものをできるだけ全部手に入れた。


「――ま、ギリシャヘラスの女神はそうでなきゃね」


 事の顛末を知った魔術の女神はにやっと笑った。


 そして今も、季節は巡っている。

 冥王は水仙の花を手にして、待っている。


『光の破壊者』――あるいは『目も眩むほどの光』とも読める名をつけた妃が来るのを、じっと待っている。

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ハデス・スキャンダル 伏見七尾 @Diana_220

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