第十三話 アルレオンの乙女
アウス暦1884.6.5
首都フォリから南東へ100kmアルレオン
サン・ルー砦
「進め!反乱軍を蹴散らすのだ!」
この地を支配する南東部の独立軍と衝突するアイスフィルド軍、それに追随する事になったフォレンツ王国軍の中、王国旗を掲げ兵士たちに檄を飛ばすレオーネの姿が馬上にあった。
「反乱軍を討ち、フォレンツ王国を一つにするのだ!」
「「オオォ!!」」
「大したものですなぁレオーネ殿は、あれで確かまだ16だと言うではありませんか。」
「ああ、鬼気迫るものがあるな…」
そうつぶやく鎌之助と共に、宮本は言い知れぬ感情を感じていた。
『此度の戦いは王国の不始末による物、ならば我らがその責を負わねばなりません。戦は我らに任せ、宮本様はどうか後方で我らの闘いぶりをご覧下さいませ。』
そうレオーネ公に言い切られ、後方から彼女の戦いを見ていたが、その戦いぶりは凄まじいものであった。
『責任が有ると言ってはいたが…だとしてもあの戦いぶりは何だ?まるで…敵を討つような…』
他の王国軍を見ればその戦いぶりは一目で消極的なことがわかった。立場は違えど、心情は彼らの味方なのである。
だが、彼女は違った。
率いられる兵達ですらもである。
他のどの部隊よりも果敢に攻め、犠牲を厭わず、そしてそれをどの兵士も疑問を持たずにやり遂げているのだ。
はっきり言って、異常としか思えなかった。
「何が彼女達をあそこまで…」
そう呟いていると、後ろから唸り声が聞こえてきた。
「アアアアァァァッッ!!もうガマンできねぇ!大将!オレにも闘わせろ!」
後ろを見れば、まだ包帯が巻かれている秀の姿があった。
「駄目だ。この戦いは王国のもので、それにまだ怪我も完治していないだろう、許可できない。とういうか、何故来た。首都で療養の筈だろう?」
「戦争があるってのに、いつまでもゴロゴロしてられるか!それにこんな怪我、もうなんとも無ぇ!」
「だとしてもだ。いいから、そこで大人しく見てるんだ」
そんなやり取りをしていると、砦から一際大きな喚声が響いた。
「どうやら、決着がついたようですな」
鎌之助の声を聞き砦を見れば、天高く王国旗が翻る砦の姿があった。
「いやはや、大したものです。武器給与があったとは言え、こうも早く落としてしまうとは。王国軍を見るに、もう少しかかると思ったんですがねぇ。」
「それだけ、彼女達の働きぶりか凄かったと言うことだ…」
その後、レオーネ率いる軍の働きにより、アルレオン各地にあった砦は、多大な犠牲を出しながらも瞬く間に制圧。これにより、アルレオンを手にする。
しかし、この時に率いた兵士のレオーネに対する狂信さと侮蔑を込め、独立軍である仇名が広まる事になる。
「聞いたか?アルレオンの攻城戦の話」
「ああ、何でも女に率いられた軍に負けたそうじゃないか、情けねぇ話だぜ」
「いや、それがさ。その女が率いた兵士は死ぬ事も厭わずに突っ込んで来て、何発食らっても死ななかったって話だぜ?」
「なんだよそれ…アウスの奴らのアンデッドか何かか?」
「いや、見た目は人間そのもの何だけどよ。まるで魔法がかかってるみたいに強いんだって話だぜ?」
「俺も聞いたぜ!何でも馬上で旗を掲げながら叫んでたらしいぜ」
「ああそうだ。連中はそいつの事、アルレオンの乙女って呼んでるらしいぜ?」
「おいおい。話を聞く限りじゃあ、乙女って言うより、まるで魔女だな」
「アルレオンの魔女…ハハッ!違いない!」
「おい聞いたか?アルレオンの魔女の話?」
「知ってるさ、アルレオンの魔女だろう?」
「アルレオンの魔女はアウスの手先で…」
「アルレオンの魔女ってのは…」
「アルレオンの…」
「魔女…」
「アルレオンの魔女」
アウス暦1884.6.13
異世界遠征〜私の戦争〜 @Gamaschen2652
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