第4話 診察時のうっかり
唐突ですが、私は『コウペンちゃん』というキャラクターが大好きです。何でも肯定してくれる、皇帝ペンギンの赤ちゃんのキャラクターです。朝起きると「起きてえら~い」、出勤すると「出勤してえらい!」、「はなまるをあげます」とほめてくれます。仕事に疲れた心にとても癒しを与えてくれる存在です。家族の間で家事や何か物事がうまくできたときに、お互いに「花丸だね!」といいあいます。
そんなある日のこと。健康診断では午前中におおよそ一人で60人近い患者さんを診るので、終わりかけになると少し頭の回転が遅くなり、疲れが出てきます。
そんな終わりかけに、その日にわかる採血データに一つも異常値がなく、視力、聴力、肺活量も体格もすべて正常値の範囲内、特に気になる症状もないという50代の男性がみえました。50代にもなると、なかなかここまできれいなデータをみることがありません。普段であれば「このまま良い状態をぜひ維持してくださいね」といったような言葉をかけることが多いのですが、頭がぼんやりした私はうっかりして言ってしまったのです。
「いい状態ですね。花丸です!」
言ってから自分でうろたえてしまいました。年下から50代男性に花丸だなんて……学校の先生じゃあるまいに……生意気に聞こえた?……馬鹿にしているのかと思われたかも……コウペンちゃんの言葉を診察室で出すべきではなかった……頭の中を後悔がぐるぐるとめぐります。(Wikipediaにも花丸は子供向けの誉め言葉と書かれています)
おずおずと患者さんの顔をうかがうと一瞬びっくりしたような顔をされたのちに、にっこり。
「花丸ですか!いいですね!」
無事にご帰宅されました。優しい方でよかったです。
疲れたときは普段の行動がついうっかり出てきてしまうものですね。それから自宅で「花丸だね」という頻度はもちろん減りました。
健康診断時のあれこれ(健康診断を受けるときガイド) 八部まどか @inu-kuma
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