不思議な不思議な感覚を覚える話です。

泥沼のようにドロドロのハプニングが、数珠つなぎにやって来る主人公の人生。
その中を、傷つきながら、逃げながら、ある種淡々と影薄く歩んでいく。
その淡々さが、読者が感じる悲劇の粘度を麻痺させていく。

その分話のテンポは良く、無意味な強制イベントも無く、
主人公の主観だけで話は進む。

まるでガラス造りの街のように、連続する悲劇も、わずかな愛も、
全て透けて見えるように価値が見いだせない希薄な話にも思える。

一度読んでみると、ライトすぎると感じる感想に再度読み返すでしょう。
二度読むと、不思議な不思議な感覚を覚えます。

粘度の高い沼を、スッスッと進むかの如く、
何も抵抗感じないのに、確かに頭に残るモノがあるのです。

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