第3話 花たちがスクラムを組んで守ってくれました~!



 ある夏の日の夕方のことです。🌅


 晴れていた空がかき曇ると、どしゃっとばかりに大粒の雨が降って来ました。

 横なぐりの強風も吹き始め、まるで秋の台風がやって来たかのようです。🌀


 フックンと2頭のミツバチは重い蜜籠を抱えて右往左往。

 とそのとき、サヤサヤやさしげな声が聞こえて来ました。

 

 ――さあ、こちらへいらっしゃいよ。🌺

   葉っぱのかげにお入りなさいな。🍁

 

 見ると、大きな花たちも小さな花たちもみんなで葉っぱを広げてスクラムを組み、3頭のミツバチが雨宿りできる空間をつくってくれているのです。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ


「お花さんたち、どうもありがとう!!!」

 フックンたちが大いそぎで避難したとき、

「ひーっ、助けて!」悲鳴が聞こえました。


 葉っぱのすきまから覗いてみると、それはむかしの仲間たちでした。

 雨に打たれ、風に吹かれ、よろよろしながら、やっと飛んでいます。

 このままでは、全員、地面に打ちつけられて死んでしまうでしょう。


 フックンは花たちに、葉っぱのすきまに入れてやってくれるよう頼みました。

 花たちが快く葉っぱを広げてくれたので、むかしの仲間たちは助かりました。


 そして、フックンたちに気づいたらしく、きまりわるげにモジモジしています。

 見ると、どの蜂もめっきり太ってしまい、黒と黄色の縞模様も、はち切れそう。

 きゅっと筋肉の引き締まったフックンたちとは、月とスッポンの差があります。


      *


 最後にひときわ巨大な蜂がやって来ましたが、からだがつかえて入りこめません。


 フックンが花たちに「葉っぱのスクラムを可能な限りゆるめてみてくれませんか」と頼みこんだので、なんとかジョージも雨宿りの仲間に加わることができました。


 でも、小さな目立たない花たちは、フックンに念を押すことを忘れませんでした。


「いいですね、これは決してこの蜂のためにしていることではありませんよ。わたしたちはフックンのためにしているのです。そこのところを間違えないでくださいね」


「お花さんたちの気持ちは痛いほどわかります。けれど、ジョージにも、ああしなければならなかった理由がきっとあったと思うのです。どうか許してやってください」


      *


 とそのとき、いままで聞いたこともないような野太い泣き声が鳴りひびきました。


「うわん、わんわん💦 フックン、小さなお花さんたち、ごめんよ、そして、ありがとう。おいら、おいら本当はね、みんなに慕われているフックンがうらやましくて、目障りでならなかったんだ。それであんないじわるをして……本当にごめんなさい」


 夕立ちだったのでしょうね、ひとしきり降った雨も、からりと上がったようです。

 すっかり元どおり、ひとつの仲間になったミツバチたちは、口々にお花さんたちにお礼を述べると、みんなでもうひと稼ぎしようと、元気よく飛び立って行きました。

 

      ****

 

 あっという間に過ぎてしまう短い一生に、ミツバチは1万5,000個の花を巡って、やっとティスプーン1杯の蜜を集めると言われています。🌸🌷🌻❀🌼🌹🌺⚘🍂🍃🍁✾


 そのささやかな命を精いっぱい輝かせようと、今日もまたフックンの後輩たちが、大きな花も小さな花も、まんべんなくまわって、せっせと蜜籠に蜜を集めています。

                                  【完】

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ミツバチの雨やどり 🌺 上月くるを @kurutan

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