そこは確かに現実世界で、しかし異なる理で成り立つ場所だった。

この作品を一言で言い表すのは難しい。

誰もが読み始めはほのぼのとした青春ラブコメを想像しただろう。

しかし、りんごが坂道を転がり落ちるがごとく、物語は読めば読むほど加速し、途中で抜け出すことは難しい。

舞台は現実世界だが、ある意味異世界と言えるだろう。

古代中国を彷彿とさせる世界観の中で、宗教、格差社会、優生思想、遺伝子操作、生命倫理といった現代社会が抱える問題に踏み込んでいる。

にも関わらず、とっつきにくさを感じさせないのは、主人公を含めた登場人物たちが確かにそれぞれの信念をもって事態に向き合っているからだろう。

そこに確かに人の息づかいを感じ、大きな問題に個人としてどう立ち向かうかを考えさせられる。

読了後もあとをひく物語だ。

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