第2話 雪女と待ち合わせ
この色川駅には北口と南口があるが、駅前といえばショッピングモールやレストランに近い南口の方を指す。桧山からも『もちろん南口の方で待ち合わせですので』という連絡があらかじめ来ていたので、南口で桧山が来るのを待つ。それにしても早く着きすぎてしまっただろうか。自分の腕時計は11時5分を示している。約束の時間まであと25分もある。ずいぶんと早く来てしまったということは自分でも知らず知らずのうちにどこかで意識してしまっているのだろうか。
「すみません、お待たせしてしまって」
桧山は俺の前に姿を現した。服装はグレーのTシャツに白のズボンで大変かわいらしい服装でのお出ましだ。
「いや、俺も今来たところだ」
一方で俺の方はというと、全く着飾ってこなかったのでより一層2人のバランスがとれていないように感じられる。少しはおしゃれをしようと努力をしてみたのだが、これまでの人生でそんなこと気にせず生きてきたため、結局何がおしゃれなのか分からないという残念な結果となってしまった。
「その服似合ってるな」
正直な感想を述べた後にこれじゃあ口説くやつの言葉だな、と気付き少し恥ずかしくなる。
「ありがとうございます。それでは行きましょうか」
だが、桧山の方は全く気にしてない様子で足早と歩き始めてしまった。変な受け止められ方をしていないのならいいか、と気を取り直し急いで後ろをつけると、桧山の足は飲食店の多い繁華街へ向かうのではなく途中の通りで曲がり、住宅街の方へ向かって行ってしまった。
「住宅街に店があるのか?」
「そうですね、もう少し先です」
そう言って迷わずに歩みを進める。
桧山の後ろを付いていく中、一抹の不安が生じた。こういう細い道、住宅街にチェーン店なんてあるわけない。あるとしたら個人が経営している店だろう。そういう店は外れである可能性が高いのだ。いや決して、個人経営の店が悪いと言っているわけではない。だが事実として、店によっては家で作った方が美味しいだろうと思うような大外れの店もあるわけで。
もし当たりの店だとしたら、世間の人が放っておくわけがない。たとえ住宅街にあろうとそこが名店ならば人は集まってくる。だが、俺はこの辺りで噂になっている個人経営の店に全く心当たりがないのだ。
本当に一体どこに連れていかれるのだろうか。
「着きましたよ」
駅から10分ほど歩いただろうか、どうやらお目当ての店に到着したようだ。喫茶『SERENDIPITY』という全く知らないお店である。ドアに、古びた木製の両面看板が『OPEN』とかけられている。
『隠れた名店』なんてものを信じていない俺にとってますます不安が襲ってくる。だが桧山は俺の不安を感じ取ったのだろうか、
「別に心配しなくても大丈夫です。美味しいのは私が保証しますので」
それだけ言ってしまうと、さっさと店に入ってしまった。
クールなクラスメイトに傘を貸したら @okwkkwd
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