第7話こぼれ落ちる詩語

唇からこぼれ落ちる詩語に有意の名はなく

ぽぽろんと奏でるピアノの音色を名づけ

あるいは堕落してゆく生活にぴろれんと名づけて

一つひとつの名を呼ぶために遠い記憶から

音を拾い集めて奏でようとするとき

そこに詩が立ち現れることをただ祈り

無謬の言葉 誤用の言葉 無用の言葉を愛し

矛盾に貫かれた思想を掲げても明日には頽れ

散り散りになってゆく言葉をかき集めても

あなたに届くことはなく

言葉がただ一つの意味しか持たぬことを願い

解釈という刃によって腑分けされる痛みを味わい

そこに現れた内臓の輝きを見るとき

そこからあふれ出る涙の色を問うとき

あなたの生まれてきた海の中に

寂しげな虚になった真珠貝が口を開けて果てているのを

誰ひとり知らないままで汚染されてゆく

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【詩集】やがて水になるまで 雨伽詩音 @rain_sion

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