恋愛心理サスペンス…彼女の心を通して追う真実。

 物語は夫が刺殺された時、傍にいた陽菜子の視点で綴られます。
 思う所の多い仲であった夫が、突如いなくなった困惑。目撃者、容疑者と扱われてゆく騒がしさ。時に思い出に浸り、全く別の事を考え、今の状況と似つかわしくない言動をする。
 それが、妙な現実感。何か事件が起こったとしても、現実を生きていくという事をひしひしと感じさせます。

 そして、思いや考えを多分に含んでいる、彼女の視点で物語が進んでゆくからこそ、写実のように鮮やかな、でも決して実写では語れない、彼女の心理、彼女の心のフィルターを通してみた世界を体感するようでした。

 決して先の読めない、常に緊張をはらんだ展開。揺蕩うような薄闇の世界の中で、彼女が辿り着く真実とは―――。
 結末に、驚かさせること、間違いありません。



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