お茶会、アップルパイ、恋愛と、甘い匂いのする単語が並ぶ物語なのですが、どうした訳か、私には甘い匂いよりも強く感じる歌織がある物語でした。
緑の香りです。
果樹園のリンゴの木、それらが立つ土の香り…そんなものを感じるくらい、爽やかな物語に感じられました。
恋愛というジャンルには、ある程度以上、神様に贔屓された男女でなければ回せない物語が多い中、この物語、特段、容姿が優れている事を表す言葉が少ないところにも好感が持てます。
それは恋愛が特別なモノではなく、青春時代に於ける一コマである事を思わせると同時に、大切な事であり、美しい事であるとも感じさせるからです。
木々の緑と空の青さ、それにリンゴの赤がよく似合う、そんな物語です。
(感想です)
これはとても素敵な物語ですね。
お茶会が中止になってしまい、保護区へ向かう下りからどんな展開になるのかと思っていたら、素敵な出会いがあるとは。
品のある作風がよりドラマチックに感じさせる物語だなと感じました。
主人公の女性は、過去にトラウマを抱えていた。どんな理由なのかは後から分かることなのだが、その姿を見て彼は思ったままのことを口してしまう。きっと正直な人であり悪気はないのだろうが、主人公もその事には少し警戒をしていた。これは誰でも共感しやすいことなのではないだろうか?
素直だから人を不快にさせないということはない。思っていることをそのまま言えばいいということでもない。しかし彼の場合は、フォローしてくれる人がいた為、悪い印象のままでなくて済んだのだ。
そして、その事があったからこそ主人公は彼がどんな気性の人なのか理解しやすかったのではないだろうか。口は悪いが悪気のない人であるということを。
主人公の心の変化のあとは、とても可愛らしいと感じた。人に好意を寄せることは同時に不安になることでもあるのだ。誰しも自分が好意を寄せる相手には、良く思われたいものである。全体的に、素敵な世界観だと感じた。
自然や色とりどり花や果実が目に浮かぶようである。ピュアな恋愛ストーリーの好きな方には、是非お勧めしたいと感じました。
オススメです。
列車に一時間半揺られ、主人公のミリーが向かう場所。
過去の出来事からまだ立ち直れず、その素敵な自分を真っ黒な装いで隠し守っている。そんな彼女は大好きな叔母の家でお茶会を……と少し心を躍らせていると、思わぬハプニングで予定は中止に。
小さな偶然が、引き寄せられた糸のように絡まり、そして解いてくれた髪のようにゆっくりと彼女を導いてくれる。
秋の輝く英国の田園風景と、そこを優しく吹き抜ける風が感じられるような。
ミリーのように、私もそんな素敵なお話に出逢ってしまったような気分です。
彼女がそこで出逢ったのは自分を隠さない正直な人。
小さな失敗も、試みも、一緒に笑顔で切り分けながら。
秋の黄金色の木漏れ日と、たまに酸っぱいクラブアップル。
沢山の風景に彩られて、ページをめくる度に素敵な気持ちにさせてもらえる物語。
ちょっと足を止めて、アナタもこちらの物語へお散歩にいらしては?
目を閉じれば木漏れ日に揺れるイングリッシュガーデンが、呼吸すればそこに爽やかな緑や薔薇の香りが感じられるような……映像が頭にパッと浮かぶ、そんな描写にただただ感動しました。
美しい。読んだだけで、もう自分の周りは一気に英国の田舎の綺麗に手入れされた庭にいるような感覚です。いや、いたかもしれない。意識は飛んでた。
それくらいに素晴らしい描写でした。
きらきらと光が揺れる木漏れ日の、クラブアップルの木の下に佇む二人。惹かれ合うのは、まるで呼吸するように自然なことで……。
読み終えたとき、ここは英国かと思ったほどです。
この作品を読んで、ぜひ英国の空気を味わってみてはいかがでしょうか。
文章で風景が見えたり風を感じる事が稀にありますが、こちらの作品はまさに文字を読んでるはずなのに映像が広がる系でした。
どういう風景が広がるというと、有名なところだとターシャの庭といった感じでしょうか。花が溢れるどこか懐かしい空気感と、素朴な雰囲気に親しみを感じる緑の世界。
主人公ミリ―。彼女は田舎に移り住んだ叔母の家でのお茶会がお気に入り。育ちが良く性格も良い都会の普通の女の子ですが、彼女は過去の出来事から本当の自分を隠しがち。黒ずくめで眼鏡で顔を隠していて、その姿はこの風景で浮いてるかもしれない。
そんな彼女が散歩道を誤った事をきっかけに出会う人。
彼は正直でまっすぐで彼女をどんどん変えていってくれます。この風景に彼女は溶け込んでいけるのか。本当の自分を取り戻せるのか。
その過程が本当に素晴らしい短編。
酸っぱい姫りんごも、恋の甘さと組み合わせれば、という素敵な物語です。