(2022/8/4執筆)
エリートにも関わらず拳銃を携行できない警察官、市川警部。
そんな彼に主人公の緒方勇刀警部補が興味を持つ事から始まる。
最初は勇刀に対してそっけない態度を取る市川だが、それでも彼の事を探ろうとする勇刀と、市川が過去に遭遇した事件、更には新たに発生した事件が複雑に絡み合う重厚な物語だ。
この物語を簡単な言葉で語るとするなら、「過去の清算」だ。市川には勿論の事、主人公の勇刀、係長の遠野、彼らに関わりのある警察官、そして事件の犯人にも、何かしらの過去がある。それを念頭に入れつつ、事件を追うと、より面白く感じることができるだろう。
コールドケース──それは永遠に終わらぬ迷い道。ただ事象を記しただけの冷たい傷跡──未解決事件。
サイバー犯罪対策課、エリート警察官市川と警部補になったばかりの特別研修生、勇刀が事件に立ち向かう。
冷血漢と熱血漢。全くタイプの違う二人。
事件は警邏中の警察官が襲撃される所から始まる。拳銃を携行できない市川の秘密とは? 影のあるエリート警察官市川と事件との関わりが少しずつ明らかになっていく。
見所は美々しい心理描写とスピード感でハラハラさせるアクションシーン。
ミステリータッチでストーリーは進んでいくが、人物の心の内が繊細に描かれているため感情移入しやすい。
主役二人の性格が対照的なのも魅力の一つ。想いだけでは、どうにも出来ないもどかしさに葛藤しながら、時に冷徹、時に感情を爆発させる。
刑事モノでもハードボイルドではない。熱い人間ドラマだ。
アンダーワールドとは犯罪者たちがいる、悪の世界を指す言葉だ。
そしてそのアンダーワールドはまったく離れたところにある世界ではないってことを痛いぐらい思い知らせてくれたのはこの作品だった。
この物語には普通の警察官たちがあれよあれよとそのアンダーワールドに引き込まれる過程がつぶさに書かれていて、ハラハラドキドキ。リアリティと重厚感、そして細部まで作り込まれていて、ドラマに入り込んだような気さえした。
そんな世界の中、主人公の緒方勇刀はからっとした性格で、彼が物語にいると、光が差すような気がする。きっと市川にとってもそう見えるんじゃないだろうか。
ラストまで良かった作品なのでおすすめ!