吸血鬼による吸血鬼のための教義を作ろう。二人の高校生が編み出したのは宗教か、はたまた屁理屈か。既存の宗教も、アイデンティティーを守るために誰かが考えたのだと思います。こうした話が世界のそこかしこで行われていたとすると、興味深いですね。
はっきりいってこれかなりすごい作品です。まず、吸血鬼が自分たちの宗教を創る、という、その奇想だけで「やられた」っていう感があるんですよね。吸血鬼ものというのは一種のジャンルと言っていいくらい色々なものが書かれていますが、これ以上うまいギミックとしての利用の仕方はなかなかないでしょう。いちおうは完結しているのですが、すごく「続き」あるいは「長編版」などが読みたくなる作品でした。
人間に紛れて生きることも当たり前になった吸血鬼。血も吸わず、己の出自を隠して生きる生活に誇りはあるのか。それに抵抗すべく田字草先輩が打ち出した案は『自分たち吸血鬼のための宗教を作る』こと。いきあたりばったりな子どもの夢物語、ではなく、先輩は着実にその筋道を整えていく。そして彼らの始めた『宗教』はやがて……。『終』まで読んだ後、空気の一変する感覚が恐ろしい一作です。