第4話

 そう言って、アムールトラはセントラルパークへと旅立ちました。

 フレンズになってしまった時から感じていたのですが、私がヒトだった記憶は時間が経つにつれてどんどん薄れてゆきました。なので全てを忘れてしまう前に、私は自分の姿を絵に描いて残しておく事にしたのです。


 まずは真ん中に、アムールトラから預かった帽子を被っている私を描きました。それだけだと寂しいので、向かって右側にサーバルさん、ミライさん、菜々さんを。そして反対側にカラカルさん、それと今の私を描きました。それからその間には、右手を私の頭に乗せたアムールトラを描きました。ただ左腕は描きませんでした。

 いつか腕が元に戻ったアムールトラが帰ってきたら、記念に描き足そうと思ったのです。また、そうして完成した絵を帽子と一緒に彼女に渡そうとも考えていました。


 しかしあれっきり、アムールトラは帰ってきませんでした。彼女がどうなったのか、はっきりした事は誰も教えてくれませんでした。それでもちらほら聞こえてきた話をまとめると、なんとか腕は元通りになったものの、傷口から体内に入ったセルリウムのせいで彼女は『ビースト』と呼ばれる状態となり、ある日治療施設を飛び出してそのまま行方不明になってしまったそうです。


 もちろん私は探し出そうとしました。しかしアムールトラの言った通り、どんなに頑張ってもこの村から出る事はできませんでした。

 なので私は彼女が戻ってくるのをひたすら待ち続けました、何年も、何年も…。



 それから途方もなく長い年月が経ちました。いつしか私の周りからヒトはいなくなっていました。どうしてそうなったのか、今ではもう思い出せません。また私の手元には、ボロボロの羽のついた色あせた帽子と誰かが描いたであろう絵があるのですが、これがなんだったのかも覚えていません。でも何かを待ち続けなければいけない、そんな思いだけはハッキリと残っています。


 私はずうっとひとりぼっちで過ごしていたのですが、ある日探偵だと名乗る2人のフレンズがやってきました。話を聞いてみたところどんな探し物でも見つけてきてくれると言うので、寂しかった私はヒトを探して連れてきて欲しいと依頼しました。


 それから数日後、2人は約束通り2人のフレンズと、青い羽のついた水色の帽子を被った1人のヒトを連れてきてくれました。それは絵に描かれている子達とそっくりで、私は嬉しさのあまり夢中でそのヒトに飛びつくと、千切れそうになるくらいブンブンと尻尾を振りながら叫びました。


イエイヌ「おかえりなさい、ここがあなたのおうちです!」

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わんわんぴーす 今日坂 @kyousaka

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