第11話 紫の発狂
「しょっ、勝者、白組代表!!!
審判が腕を大きく振り上げて叫んだとき、私はただうつむいていた。
待ちに待ったあいつとの試合。
最初は私が攻めるばっかで、あいつはずっと変な声を出して避けていたのに。
私がとどめを刺そうと大技を使かった瞬間に、あいつは本気を出してきて。
どうやったかわからないけど片手で剣を折って、その後は触れずに私を転ばせ続けた。
「ッツ………」
私は拳で地面を殴る。
この私がギビアップするなんて………あなたに、あなたにまた手も足も出せずに負けるなんて…。
「うぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!やっっぱ天才は違うなぁ!!!!」
「物理学もできて物理攻撃もできるなんて!!!!!!!!!」
「最高だぜっ!!!!!!!!」
「我らの誇りっ!!!!!」
観客たちの声援が、今の私には痛かった。
自分は負けた。その事実を改めて突きつけられると、胸が締まって泣きたくなる。
でも、ここで泣いちゃだめ。
ここで泣いてしまったら、優しい彼はきっと私に構うから……。
また彼に救われるのは…………嫌だ…。
「……………。」
「あの、立てますか?」
私が試合が終わっても座ったままでいるのを心配してか、彼が近づいてきて、そんな言葉をかけてくれた。
「…………。」
私は何も言わなかった。
…………言えなかった…。
今までずっと何年もこうやって話すことを夢見てたのに、いざ対面すると何を言えばいいか分からず、頭が真っ白になる。
私が彼を見つめ続けていると、不意に彼が手を伸ばした。
驚きから目を見開いた私に、彼は優しく微笑む。
…………そうなのね、あなたはやっぱそうやって、私を助けるのね……。
私は今度こそ溢れ出ようとする涙を必死に堪えて、その手を取った。
「よいしょっ…。」
彼が優しい声色で軽々と私を引き上げる。
研究三昧で外に出ることなんて少ないくせに、なんでそんなに余裕そうなの……。
持ち上げられた勢いで私の肩と彼の肩がトンとぶつかる。
っ!!! 近い!!!!!
私が体を離そうとすると、彼は耳元で
「俺の負けだよ…。」
そうつぶやいた。
っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
なんでっ!!! なんであなたはそんなに………………優しいのよ…。
私は彼から距離をとってなにか言わないとと、お礼を、感謝を述べないとと考える。
でも、これといった言葉が浮かばない。
テンパった私はつい口癖に、
「…………バカ…。」
そんな罵倒の言葉を口にしてしまった。
っ!!!!! 私何言ってるのよ!!!
助けてもらったのにバカだなんてっ!!!!!
私はもう耐えきれなくなって、彼の前から逃げるように立ち去った。
「バカって……なんでそんなこと……。」
私はそれを行ったときの自分を猛烈に恨んだ。
これで、小さかったはずのチャンスが本当にゼロになってしまった。
「はぁ………。」
生徒たちが、閉会式に向けて動き出している忙しない光景を見ながら私は、
「………ツゥーーーーー…」
肺が壊れるほどに息を吸って。
「貴方のことが好きなのよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
地球が揺れるほどの大声で発狂した。
……………このあと友達に何かあったのかと聞かれて、負けた件と合わせて3時間半も慰めをもらった。
私が絶対に振り向かせてやるんだからぁぁぁぁっ!!!!!!!!
〜Fin〜
バカと変態はかみひとえっ!! 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n
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