その事件、勇者にお任せを。これは偉業を成した後の勇者たちの日常(?)譚

  • ★★★ Excellent!!!

かつて【魔竜フェイデル】が封印から解き放たれたことにより、全ての【脅威】が活性化される大いなる禍が、世界を覆い尽くしたことがありました。
人間滅亡の危機。それは、【勇者】率いる四人の【魔法師】たちによって解消されました。

スカーレット・オリエンス。才色兼備にしてオリエンス商会の社長の女性。一行のリーダーは彼女だったといい、人々は彼女を『白き勇者』と冠しました。
ナナハネ・ハートリー。『天上のひまわり』という愛称を持つ彼女は、元サーカス団員。魔法はもちろん、優れた身体能力で勇者を支えたと言います。
ガスパー・ディアンツ。自らを『闇の帝王』と称する錬金術師。爆発力のある魔法とその前向きさで、一行のムードメーカーのような存在となっていたそうです。
そして忘れてはならないのが、レンリ・クライブ。治癒魔法が得意で聡い彼は、大変な苦労性。奔放な三人をまとめるのは、たいてい彼の役目だったそう。

こちらの作品は、レンリさんの視点で語られる、勇者のその後のお話です。
彼らはスカーレットさんが経営する【オリエンス商会】に全員が属していて、依頼を受けて人々の悩みを取り除くのがお仕事です。
偉業を成してなお苦労性のままであるレンリさんは、日々様々な問題に頭を悩ませつつも、事件解決のために奔走する——

ファンタジーでありながら、丁寧な設定や現実味を感じさせる描写が、地に足のついた物語だと感じさせてくれます。
また、勇者たちの日常が味わえるところも素敵です。ある時は酔っぱらい、ある時は虫に怯え、そしてある時は恋愛を——彼らのそういう人間らしい一面を見ていると、親近感が湧いて来てしまったり。笑
そして何よりの魅力は、ミステリー的要素も含んでいて、我々読者もまた謎解きを楽しめる点です。人気女教師が、突然働けなくなったのはなぜ? 警備を強化しているのに、妖精園の妖精たちが毎日襲われるのはなぜ? そういう謎に、レンリさんたちと一緒に立ち向かってみませんか?

読めば読むほど面白みが増してくる、すばらしい作品。ぜひ、もっと多くの方に読んでいただきたい一作です。

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