このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(397文字)
涼やかな情景の中で繰り広げられる会話は、すべてが別れに収束する。有限な時間の中で、私たち人間はなぜその流れに抗いたいと願ってしまうのだろう。叙情SFの高嶺たる本作、要刮目!
「さよならも言えずに去ってしまった」なんて急逝した方のお葬式ではよく聞きます。ではもし、さよならが言えたら?仮の肉体と機械仕掛けの意識で構成された友人「璃湖」に会いに行く主人公。ラストに至るまで、短編とは思えないほど濃密な読書体験を味わうことができました。読み終わった今も、頭の中を言葉にならない何かがぐるぐる回っています。美しい文章とこの濃密な時間を、是非味わってみてください。