第41話 爆発騒ぎの調査に同行する事になった


6日目7



結局、メンダースの“処分”に関しては、やつが特に犯罪行為には手を染めていなかった事、ただし【黄金の椋鳥むくどり】の企みに加担して、結果的に冒険者ギルドをあざむこうとした事等が考慮され、冒険者ギルドでの無料奉仕1週間が課せられる事となった。

メンダースの件が一段落ついた所で、俺は改めて“仲裁”の件について、トムソンに聞いてみた。


俺としてはこの流れで、今日このまま、この前中断第15話してしまった“仲裁”の続きが行われると思っていたのだが……


トムソンが申し訳無さそうな顔になった。


「カース、すまん。実はこの後、ヴィリエ卿イネスにまた、同行を頼まれていてな。今日は時間が取れないんだ」

「何かあったんですか?」


俺の問い掛けに、イネスが口を開いた。


「実は昨日もまた、謎の大爆発が発生したので、その調査をお手伝いしてもらう事になっているのです」


謎の大爆発……

まあ、九分九厘、俺にとっては謎でも何でもない、昨日のアレの話だろうな。


俺は昨日、【殲滅の力】を街の東の高台で使用した時の事を思い出した。


と、イネスが突然、何かを思い付いたような顔になった。


「そうだ! カース殿とナナ殿も調査、手伝って頂けませんか? もし手伝って頂けるのなら、それなりの報酬、ご用意しますよ?」


報酬!

相手は深淵騎士団副団長様だし、それなりの額を用意してもらえるのではないだろうか?

まだまだ金欠が解消していない俺には、なかなか魅力的な提案だ。

それに調査に同行すれば、今、あの場所がどうなっているのか、合法的に確認しに行ける。


しかしトムソンが渋い顔になった。


「もしかしたらヴィリエ卿イネスはご存知ないかもですが、カースはレベル40。しかもスキルも魔法も一切使用出来ないので、連れて行っても、何の役にも立たないかと」


おいトムソン!

なんだその身も蓋も無い言い方は?

って、俺のレベルが、本当は313だって事を知らないトムソンからすれば、当然すぎる発言か。

それにまあ、レベルがこれだけ高くなっても、確かにスキルも魔法も一切使用出来ないのは事実だけど。


俺が少しばかり落ち込んでいると、トムソンが言葉を続けた。


「ボランティアならともかく、報酬が発生する調査にご協力させて頂く以上、冒険者ギルドとしても、ちゃんとした人員を用意させて頂く必要があるかと」


しかしイネスが意外な事を言い出した。


「カース殿は、一昨日第27話、東の高台で魔族と対峙しても生き残った強運の持ち主。なまじスキルや魔法を使えない分、使える者では気付けない事でも、彼なら気付ける事があるかもしれません」

「なるほど……」


トムソンが思案顔になった。

そして俺に改めて問い掛けてきた。


「一応聞くが、もしこの調査に同行してくれって話になったらどうする?」

「それはもちろん、俺なんかで良ければ、喜んで参加させて貰いますよ」


調査は昼間に行われるみたいだし、イネス達深淵騎士団とトムソン以下、冒険者ギルドの精鋭達が参加する調査への同行は、俺にとってはリスクゼロの御褒美クエストみたいなものだ、


と、それまで黙って話を聞いていたユハナが声を上げた。


「その調査、私達もお手伝いさせて下さい!」


トムソンがジロリとユハナを睨んだ。


「お前達が?」

「はい。報酬は辞退しますので、是非ご協力を……」


マルコやハンス、ミルカといった、【黄金の椋鳥むくどり】の他のメンバー達が、慌てた雰囲気で、ユハナにこそこそ話しかけた。


「お、おい! どういうつもりだ?」

「無報酬ってなんだよ!?」

「そうよ。それに私達、今日はレスター第33話さんからの指名依頼、こなす予定だったでしょ?」


そんな彼等に対し、ユハナが何事かをひそひそ説明し始めた。

内容は聞こえてこないけれど、どうせろくでもない相談、始めているに違いない。


はっ!?

もしかして調査の間、合法的に俺に付きまとって、俺を説得脅迫しようって魂胆なんじゃ……


やがて相談がまとまったらしく、ユハナが再び口を開いた。


「このたびは色々な手違いが重なって、冒険者ギルドにも、イネス様にも色々ご迷惑をおかけしてしまいました。ですから今日は無報酬で、皆様の為にご奉仕させて頂きたいのです」


手違いってなんだよ。

お前等が確信犯的に偽者連れて来たからこその、今朝の騒動だろ?


と心の中でツッコんでいると、イネスが冷ややかに言い放った。


「申し訳ないですけど、例え無報酬でも、信義と言う言葉と対極にいらっしゃる方々を、調査に加えるつもりはありません」

「では、私だけでもお供させて頂けないでしょうか?」


イネスが怪訝そうな表情になった。


「あなただけ?」


ユハナがうなずいた。


「私は聖女の『職』を得ておりますし、万一何かあった場合、皆様を癒して差し上げる事が可能です。それに行き違いとは言え、私がメンダースさんをカースさんの尾行者だと偽ってしまったのは事実です。どうか私に罪を償う機会を与えて下さい」


ユハナはそのまま深々と頭を下げた。

それをマルコやハンス、ミルカ達も神妙な面持ちで眺めている。


イネスが軽く嘆息した。


「なるほど。確かに罪を償う機会は与えられるべきかもしれませんね」


ユハナが顔を上げた。


「でしたら!」


イネスがにっこり微笑んだ。


「ですがそれは“今”では有りません。調査への同行の申し出、丁重に断らせて頂きます」



結局、調査への同行、俺とナナは認められ、【黄金の椋鳥むくどり】の連中は認められなかった。

イネスから、1時間後をめどに現地集合と聞かされた俺は、ナナを連れて準備のため、一度宿に戻る事にした。


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追放されたら美少女を拾った件 風の吹くまま気の向くまま @takashi21

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