三十三話

「ガイ、起きて?もう朝だよ?」


「ん···」


目を覚ますとそこはベットで隣にはメリーがいた。あたりを見渡すとここは僕たちの部屋だ。いつ戻って来たのだろうか。


「メリー、僕たちは一体···」


「早く準備しよガイ?遅刻しちゃうよ?それともまた私と···したい?うふふ、ガイったら。」


言われるがまま支度をして寮を出た。外は“桜が咲きほこっており”、まるで春の訪れを感じるかのようだ。


「ガイ?当たりを見渡して何かあった?」


「いや···何でもないよ。」


「そう?じゃあ早く行こ?」


学校に着き教室へ入ると見知った顔ぶれがそこにあった。


「よっ!ガイ、おはよう!」


「あ、ああ。おはようベル。ハーシィさんもおはよう。」


「うん、おはようガイノス君。相変わらずメリーとは仲がいいのね?」


「もう、ハーシィちゃんったら♥」


いつも通りの会話。久しくやってなかった気がする。確か僕たちがこうやって話していると···


「お、ガイノスじゃないか!俺も混ぜてくれよ!」


どこからかユーテリアも現れる。これでいつもの顔ぶれが···


「もう兄さん!すぐそうやって走り出さないでください!全く···」


「ああ悪い“ラクシア”、気をつけるよ。」


何故かあのラクシア・ハーレがそこにいた。いや、確かに彼らは兄妹だがラクシアさんは中等部のはずでは?


「ん、どうしたガイノス?そんな変な顔をして?何かあったか?」


「へ?いや···何でもないよ。」


その後、何事もなく時間が進んでいった。僕には何故か違和感があった。今日の授業はなんだか前にも聞いたことがあるような気がしたし。


「そういえばベーラル?”入学式から一週間たったし”班はもう決まったのか?」


班?班はもう決まったはずでは?というか入学式?何を言って···


「俺はハーシィと一応組んでるけど···君だって妹さんと組んでるんだろ?」


「まあな。なあ、提案なんだか俺たち組まないか?人数は多いほうがいいだろ?」


「俺は構わないがハーシィはどうだ?」


「私も構わないけど。あ!メリーたちもどう?ユーテリア君もいいわよね?」


「ああ!二人も誘う予定だったからね。」


「ええ、私はいいよ。ガイもいいよね?」


「え?あ、ああ構わない···よ?」


「よし!これで決まりだな。先生に紙を提出してくるよ。」


「あ、待ってよ兄さん!」


まるで嵐のように二人は去っていった。


「そういえばガイ、模擬戦って知ってるか?」


「え?あ、ああ。知ってるも何も···」


「そうだよな!生徒会長のハノル・ヴィレッジが一年ぶりに出場するもんな!」


「あ?そ、そう···だな?」


ベルの気迫に押されてしまう。というか顔がすごく近くて···違和感を感じた。


「ベーラル君?私のガイにこれ以上近づかないで。」


「あ!すまんすまん。」


「なあベル、お前目が···」


「ん?目がどうかしたか?ゴミでも入ってるか?すまんハーシィ、取ってくれないか?」


「もう···。」


ベルの目が義眼じゃ無くなっている。紛れもなく本物の目だ。やはり何がおかしい。それが徐々に確信へと変わっていった。


「···ねぇガイ、そろそろ帰ろう?」


「ああ、いいよ。」


そして歩き始めて少し経ったとき、メリーから話し始めた。


「ガイ、気づいてるよね?」


「え?な、何に?」


「うふふ、私ガイのことなら何でも分かるの。きっとこの状況に違和感を感じてる。」


「っ、ああそうだよ。これは一体何なんだ。」


「私が話すよりも見て感じたほうが速い。」


そう言われ連れられたのは図書室だった。そこでメリーは地図を広げた。


「なあ、地図なんか見て何が···」


そこで僕は気づいてしまった。帝国の隣にあるはずの国がないことに。


「な、なんで王国がないんだ?」


「それだけ?」


「え?」


よく見ると所々おかしいところがたくさんある。魔王領はこんなに広かっただろうか。帝国領はここまで大きく無かった。そして何より海沿いに面した国が帝国に、アッシロ連邦があった場所も帝国になっている。


「そ、そういえばメリー、アッシロ連邦は···」


「そこまで覚えてるんだ。なら答える、あれは私が概念ごと抹消した。」


「え?そ、そんなことできるわけ」


「もっと言うと“歴史を色々書き換えたの”。」


「···そんなわけ」


「メリーの言ってることは本当だよガイノス君。」


そこにはメリーの母親であるシラユリさんがいた。


「ママ遅かった。」


「うふふごめんなさい。後は私が説明するわ。」


「説明も何も言ってる意味が···」


「まあ簡単にいえば君は過去に戻ったんだ。色々改変したうえでね?」


「···それが魔王の力ですか?」


「そうね、でもこれは力の一端に過ぎないわ。ふふ、大変なことになったわね。」


「わ、笑い事じゃ···」


突然視界がそらされメリーに抱きしめられた。


「もうガイは私以外見ないで。私のぬくもりを感じてて?」


「強引ね相変わらず。それじゃあもう一つ言うことがあるわ。マリエスの忠告、忘れちゃだめよ?それじゃあねガイノス君、メリー。」


「じゃあ私達も行こうガイ。」


―――――――――――――――――――――


目を覚ますといつか夢で見た場所に似た天井がそこにあった。そしてすぐ横にはメリーが寄り添っている。


「起きたガイ?」


「メリー、ここはどこなんだ?」


ゆっくり起き上がりながら見渡すと小さな部屋だった。ベットが一つだけのシンプルな部屋で明かりもそこまで無く少し不気味だった。


「ここは私とガイの愛の巣♥」


「え?」


「だからここでは私だけを感じて♥」


メリーに上から覆いかぶさるように押し倒された。


「ガイは私のこと、愛してる?」


「ああ愛してる、大好きだよ。」


「うふふ、ならもっと私と一つになろう?わたしね、ガイともっと愛し合いたいの♥」


僕の首元に長いキスをしたあとに今度は僕の唇を奪う。僕の口はメリーによって蹂躙され、この上ない快楽と幸福を感じる。


「ンフフ♥ガイ好き♥大好き♥」


メリーの髪に触れたときあることに気がついた。


「メリー、その髪飾りは確か···」


「うん、ずっと大切にしてる。だってガイからの愛だもん♥」


「へー、そんなことしてたんだガイ君?」


「っ!」


すぐそこにヴェルディが立っていた。


「ヴェルディちゃん、仕事は?」


「もう終わりました。だから私にもガイ君を感じさせて♥」


「最初は私からだから」


「な、なんでヴェルディがこんなところに?」


「ふふ、今は快楽に身を委ねて♥」


メリーがどいたと思ったら今度はヴェルディにキスをされた。その間にもメリーは俺の服を脱がしていく。


「それじゃあガイ、私の体たくさん味わってね♥」


「その次は私だからねガイ君♥」


時間も忘れ僕は二人をたくさん愛した。抱いていた疑問も忘れて。

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漆黒の姫 @aoka20011

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