第6話 柳暗花明
着いたのは二つある校舎のうち移動教室でしか使われないB館の裏。
木は生茂り地面には鮮やかな若葉色のコケが絨毯のように敷かれていた。
こんな幻想的な景色がまさか学校の中で見られるとは、知らなかった。
今までこの学校に来たのは去年の文化祭と昨日の入学式のたった二回で知るはずもないのだけれど、なぜかこの子は知っていた。
「 さあ、撮ってくれる? 」
促されるままに彼女にカメラを向ける。
それは完成された画だった。立ち姿。表情。光の向き。
知っていたのだ。どのようにすればどんな写真になるか。写真を、よく知っている。
「なんで、私なの?」
思わず声に出してしまった。
「どうして私に撮って欲しかったの?」
「 その目に、撮って欲しい。 」
その日から、私たちは二人だけで写真を撮り続けた。別に口に出してした約束ではなかったけれど、なんでか他の生徒の前で撮らないという暗黙の了解ができていて、
私たちは学校の至る所でポートレートを撮り続けた。朝。昼。放課後。制服で。
この子はいつも幻想的で、耽美的な姿容を私にあずけてくれた。
そして季節は、夏になる。
いつも手が届かない。 霧月さえ @houjicha_rate
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。いつも手が届かない。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます