第5話 撮影

 朝、五時三十分。


これは流石に早く起きすぎたか。

昨日の夜、連絡が来てからポートレートを撮るのがあまりにも久しぶりだったのもありテンションが上がってしまって、結局寝るのが十時半というなんとも健康的な夜を過ごしてしまった。

私の家から学校までは大体四十分。近すぎず遠すぎずといったところで電車通学だ。朝の準備には時間をかけない派の私は六時にはあらかたのことが終わってしまい、暇を持て余していたので、朝の散歩がてら写真を撮りながら駅に向かい学校に向かった。


到着。七時十三分。散歩にやたら時間をかけてしまった。早朝の爽やかな空気に見る景色がいつもより透明に見えて、シャッターを多く切っていた。

 特に良かったのは川だった。 澄んだ空気、 少し登った太陽の光を川の水が反射しキラキラ光る。さらりと吹く風が私の心までくすぐった。高校生活、少し不安だった思いをぬぐい取って少し軽くしてくれた。


カラカラカラ。教室のドアをあける。


光差し込む窓。 そこには。 透き通った栗色。 頬杖をする君。


目を閉じた、その目はまつ毛がとても長くて、窓から吹く風は君をふわと包み込む。


思わず、カメラを向ける。どうにか写真におさめたいと思った。


カシャ。


君は目を開ける。


    「 来たね。

              じゃあ、行こうか 」


席を立ち、さらと歩く君の後ろを、私はただついていくことしかできなかった。



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