命燃やせよ、人が為


 本作品では「準人」と呼ばれるサポーターが、人間を補助する役割として登場します。彼らは自然人(人間)に対する様々なサポートをするために作られ、生きて、最期は凍結されます。
 主人公のK2はその中でもかなり古い型なので、依頼が無く、もうすぐ凍結される運命にあるようです。彼らに実体があるかどうかはともかく、意識はあるのですから、人に散々こき使われた結果使えないために凍結され、抹消されるという定めはあまりに可哀そうと感じます。結局どこまで言っても彼らは人間の道具であり、人間に勝てない。立ち向かおうにも動機づけがない。そんな従順すぎる準人たちと、それを利用する人間を巡る物語です。

 さて、小説に関してはかなり専門用語が多く、また文体も独特な点もあるために、決して読みやすいとは言えません。しかし全体を通して何らかの魅力があるのです。だから飽き性の私でも読み通せましたし、その読みにくさが逆に程よいハードルとなり、数回読みなおしました。そしておそらくその魅力とは、準人らの「人間味」でしょう。彼らは仲間内で情報交換や雑談をしているようですし、その行動は基本的にプログラムと思われますが、そこには明らかに「考え」や「個性」があります。ロボットや人工知能が人間のような性格を持つ小説は腐るほどありますが、本作はそれだけでなく、重厚な設定だからこそ納得のできる、準人の憐れみが見て取れます。
 健気な彼らに焦点を当てた短編、ぜひご賞味あれ。