アナログとデジタルの、朗然たる交流

 科学技術によって発明された「デジタル」という概念は、総じて「非デジタル」よりも優れていると思われ勝ちです。しかし結局は人間の人工物の本のごく一部でしかない「デジタル」が、「非デジタル」を超えることは無い――この作品を読んで、私はこんなことを実感しました。
 ただ、これだけの情報であれば、いたって普通のありふれた小説です。ここではその一歩先を行く、「アナログとデジタル交流」が見て取れるのです。この二つの要素が、互いに避けあったり、攻撃し合ったりするのではなく、偶然交じりあい、交差し、ぶつかる時。それによって生じる物語は、デジタルだけでは感じえない味わいを提供してくれることでしょう。