「SF」を最大限生かしたSF


 SFとは何かという議題に答えはありませんが、ある程度の方向性はあります。そして、私はそれに対してかなり「なんでもいいじゃないか、面白ければ」な立場をとっています。科学技術を堪能したいのならハードSF、ちょっと違った現実を見たければソフトなSFを見ればいいのですが、この作品の場合はそのいいとこどりで、とても読みやすいのです。
 
 首と体が切り離せるようになっていたり、脳の機能を改変することによって体に流れる「時間」を変えたりと、SF好きをニヤリとさせる設定はしっかりとしているいっぽうで、それを読み飛ばしても物語は追える。設定がしっかりしているがためにSF的な読み方でも楽しいし、そうでなくても不思議な未来世界として楽しめる。
 そういう点で言えばこの作品はSFであり、同時にSFという要素を最大限生かした小説であるともいえます。