桃花褐パレット

秋ノ桃。

第1話

瞼の中で爆ける淡い朱色が

今日もまたつまらない日常を連れてくる。

遊び疲れて隣で寝ていたはずの

スマートフォンは大きな音をたてる。

瞼を開く、その一つの行為を契機に

私の世界には次第に灰色が滲んでいく。

片隅に淡い朱色を残しながら。

その鮮やかな色が飲み込まれる時、私は

改めて暗くて長い一日の始まりを認識する。


灰色に塗れた世界に到着した私の、虚空を眺める視線の先には三日ほど前から点滅を繰り返す白い球が浮かんでいる。

「変化」をし続けるその球は、私に何を伝えたいのだろう。

単調で色味の無い日々をただ消化するだけの私を嘲笑っているのだろうか。

「いつからだろう。」

思わず言葉が漏れたが、答えは明白だ。

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桃花褐パレット 秋ノ桃。 @100autumn-peach

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