飢餓

(一番)

A

それは誰もが 心に飼ってるんだ

名のない飢えたケモノ


閉じた記憶を 喰い散らかしたまま

目の逸らせない場所に


見せつけるように 大きく口を開けて

次の獲物をねだる


サビ

必死になって 生きようとした

僕が僕でいるために

やつを振り切るように

夜の出口にたどり着いた


B

追い求めていたのに

惑う足 動かせない

光で照らさないで

眩しすぎて 消えたくなる


(二番)

A

それは誰もが 胸に抱えてるんだ

名のない飢えたケモノ


懸命な祈り 噛み砕いて捨てた

手がすぐ届く距離に


あざ笑うように 足元に寝ころび

気だるげにあくびする


サビ

爪を立てて 残そうとした

僕が僕である証

やつを捨て去るように

白い世界に踏み込んだ


B

恋焦がれていたのに

震える手 差し伸ばせない

優しさを見せないで

きれいすぎて 消したくなる


(三番)

サビ

知ってるんだ 踏み出す勇気は

振り返れない臆病さ

闇に巣くうケモノは

もう一人の僕なんだから


サビ

分かっていた 抱いた希望は

鏡うつしの絶望さ

闇に沈みケモノは

もう一人の僕なんだから


C

憧れて妬んで

恋しがって憎んで

寂しがって離れて

奮い立って怯えて……

僕はいつまでも 満たされないまま


※復讐ものを作品を鑑賞しました。弔い合戦の繰り返しの中、自分の本心を見失っていく人たちは、ただひたすら逃げるために前へ進む姿は、前向きな絶望を物語っていました。愛と憎悪が最も人を動かす感情だといいますが、心を糧に燃え盛った後は、灰に帰す道しか残されないのでしょうか。

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残響小歌 白木奏 @Shiraki_Kanade

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