後編 だからあなたを生き返らせたい
6
今日もあいつが部屋に来る。
そうして、一緒に漫画を描こうと誘ってくるのだ。
よしてくれ。
俺はもう駄目なやつなんだ。
お前の作品のほうが輝いていて面白かったじゃないか。
俺の作品の後に、あんな作品を持ってくるだなんて、ずるいじゃないか。
畜生、畜生。
知っていたら、もっと、いや、知っていても。
もっとうまく話が描けた。
「……くやしい」
「え?」
「おい天才漫画家。いっつも俺の部屋に入り込んでていいのか?」
「……!」
「俺は、お前を追い抜くぞ……あの時の読み切りをちゃんと完成させてな」
「……待ってます、ずっと。ずっと」
なんか思っていた反応と違う。
けれども、こいつには、感謝したくないけど、感謝だ。
もう一度、もう一度完成させる。
そしてケジメをつける。
俺に才がないのなら、ないなりに戦ってやる。
すべてを奪われた、あの主人公のように。
もう一度、立ち上がってやる。
見とけよ過去の俺。
俺はもう一度輝くぞ。
7
あの天才が落ちぶれていた。
ひどい言い方だが、正しくそうだったからそうとしか言えない。
ありとあらゆる手を尽くして、どうにか隣に引っ越した。
金持ちの道楽だとか何とか言われてもかまわない。
私は、あなたの作品に胸を打たれたのだから。
だから、もう一度立ち上がってください。
あの読み切りの、あの少女のように。
また、私の心を震わせて、嫉妬で破いちゃうくらいに。
ね、先生。
天才に殺されて、天才に生き返らせられた。 雨のモノカキ @afureteiru
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