中編 才能は、あるための物差し
3
才能とは絶望を測るための物差しである。
それは上限がなく、下限もない。
果てしなく遠いその先が、誰よりも高い頂のように見えて、その実、最も愚かであることの証左を示すものかもしれない。
だから才能なんてないほうがいい。
わかってしまうから。
どれだけ、その溝が深く、遠く、果てしないと。
理解して、しまうから。
4
扉絵いっぱいに輝く少女の笑顔と、それを見て笑顔になる人々。
その陰に怪しいものたち。
一ページほど先を進めばもう暗転。
少女の肌と眼は焼け爛れ、美しかった両手足は無残にも消え、今はただ醜い人形が一つ出来上がった。
憧れの眼は憐憫に、あるいは畏怖に、あるいは怒りに。
少女は決して悪くない。
しかしながら、原因ではないとは言い切れない。
ふつふつと、少女の中に怒りが込み上げてくる。
手のひらを返す何某等たちに?
こんな非常なことを行ってきた存在に?
違う。
少女は、少女に怒りを持っていた。
今に見てろ過去の私、と。
私は、もう一度輝いてやる。
5
最後の煽りと共に、見開き一杯に描かれた醜く、しかし先の美しさを超えるような輝きを持つ少女の笑顔に、胸を打たれた。
こんなセンスの塊を描ける存在がいると、知ってしまった。
その次の作品が自分の作品だった。
醜い。
汚い。
拙い。
面白くない。
自分は、自分は。
生まれて初めて、今の今まで大事に扱い、粗末にするものを許してこなかった自分のなにもかもを投げ出して――。
本を、破り捨てた。
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