人と人ならざる者との縁

物語が進むにつれて、楽し気な雰囲気の中にありながら、詳らかになって行く主人公達の過去と、その周囲に絡み続け、断ち切れない何か。

過去と現在が繋がり、人と人ならざる者との間に築かれてゆく縁(えん)と情。
その結び付きと共に、怪異と対峙して行く主人公達の未来は何処へと帰結し、そして原点となる過去とどう向き合う事になるのか……。


読者は、抜群の筆致で描かれる世界にのめり込み、いつの間にか物語の中を共に歩む事になる。
そして、目の前で展開されて行く楽し気な日常とは裏腹に、怪異との邂逅に驚き、その存在に恐怖し、そして主人公に救われた自分に気が付く。
そう、この物語を読みながら、読者の後ろに現れているかも知れない怪異を、主人公は消し去ってくれているのだ……。

そんな思いを持ってしまう程の、リアルな日本古来の怪異の世界と、軽快な探偵物を読んでいる様な楽しさ、その両方を体感できる秀逸な作品です。
滑らかで読み易い文章のお陰で、描かれている世界へとスルスルと落ちて行ける、重厚でありながら軽快な物語。

まだ手に取って居ない方は、ぜひご覧あれ。



磨糠 羽丹王(まぬか はにお)

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