第5話

「あれ、おかしいなあ」


状況が変わってきたのは車を走らせて小一時間も経った頃だった。


「どうしたんですか?」

弘が尋ねる。


「いやあね、ナビの調子が少し悪いみたいでこの道をずっと走るはずなのに、下道に降りろって何度も催促するんだ」


そう言っておじさんは運転席で頻りに首をかしげている。車は景色の良い海沿いのハイウェイを走っているところだった。


「まだ、目的地まで距離はありますよね」


そうオレが問うとオジさんは深く頷く。


「ああ、そういえばこの道は最近まで改修工事をずっとしていて度々大渋滞が起こっていたので、迂回路を案内しているのかもしれませんね」


検索したのだろうか、弘がスマホの画面を見ながらつぶやく。


「いやあ、そんなハイカラな技術このナビについていたかなあ」

だが、オジさんは納得していないようだった。画面と道とを何度も確認する。


「まあ、おっさんは道ちゃんとわかってるんだろ?なら問題ねぇって」


勇人がカッカと笑いながら言った。


「まあ、そうだな」


その後、しばらくナビは下道を指していたが、いつの間にか元に戻っていた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サマーバイト ワンス @xxones

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説