第14話 一色舞心流
「一色舞心流は己の心を表現する剣術です。己の心を何者にも染まることの無い唯一の色、感情、信念で満たし、その心のままに舞う。それが一色舞心流の基本理念です」
心を表現する剣術。それを聞くと三代流派よりも扱いやすい印象を受ける。
「そのためこの流派は、流派と言いながらも技や型は扱う個人で千差万別。心を表現する流派ですので個人だけの流派と言ってもいいです」
「じゃあフリックはどんな技を使うの?」
「では坊ちゃんには私の一色舞心流をお見せしましょう。この技は対人専用です。ですので坊ちゃんには私の攻撃を受けてもらいます。木剣を構えてください」
そう言われ俺は木剣を両手で持ち、前で構える。
「坊ちゃんに向けて攻撃をしますが、全力で魔力を纏って防御してください。でなければ殺してしまうかもしれません」
俺は今扱うことの出来る全て魔力でもって体を覆った。
「では行きます」
この言葉と共にフリックの纏う空気が変わる。とてつもなく冷たい、冷徹な空気が伝わってくる。
「ッ!!!」
少し遅れて体が押しつぶされていると錯覚するほどの殺気が襲ってくる。全身から踏めたい汗が吹き出し、服を濡らす。
気を抜くと意識を失ってしまうほどの濃密な殺気。それを何とかふんばって耐える。
「ほぅ、私の殺気を耐えますか。これならば私の一撃も耐えられるでしょう」
そう言ってフリックは魔力をここで初めて纏う。それはあまりにも流麗で洗練されていた。
その動きを見逃さないよう瞬きもせずその動作に意識を集中させる。
「一の太刀『朧斬り』」
「カハッ!」
突然体を激痛が襲う。わけもわからぬまま俺は地面へと崩れ落ちた。
あまりの痛みに息が出来ない。懸命に空気を吸おうとしてもつっかえてしまう。
「すぐに治しましょう」
フリックの魔力が俺の体を包む。すると痛みが嘘のように引いた。
しかしまだ立ち上がる気力がわかず、座り込んだままフリックを見上げる。
「今のは?」
俺の身に何が起こったのかをフリックに尋ねる。
「坊ちゃんに放った技は『朧斬り』と言い、体ではなく相手の心に痛みを与える技です。これは私が多用する一色舞心流の技の一つです」
「心に痛みを?」
「そうです。一色舞心流は心を表現する流派、ならば相手の心に干渉することも可能になります。これはほかの流派にはない技術です」
「それはどうやったら防げるの?」
俺は全力で魔力を覆い防御していた。しかし心に痛みを与えるならば防ぐにはどうすればいいのか。
「先程の坊ちゃんのように体を全身を魔力で覆う事も防ぐ術の一つですが、その効果は微々たるものです。この技を防ぐならば自分の心の形を知り、それを鍛え上げるしかありません」
「それはどうやったらできるの?」
「一色舞心流を学ぶことになるなら知ることになるでしょう」
そのフリックの言葉で俺のは学びたい流派は決まった。
「俺に一色舞心流を教えてくれ」
「本当にいいのですか?」
「ああ」
「わかりました、坊ちゃんに一色舞心流をお教えしましょう」
フラグは全部ぶち壊す! 黒木 海利 @Rituki47
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