お気に入りの作者が筆を置くという。
現実にその作家を知るだけに、「活動終了」の気持ちを翻してほしいと考え奔走する主人公の原田眞夜。
でも、そこに隠されていた真実を知るうち、自分たち読者の思いではどうにもならない事態と想いを知ることになって……。
誰にでも、この作者だからという推しがいることは自然な話です。そこに突然の終了宣告があったら…。
きっと「信じたくない」「続けてほしい」と思うのは自然なことだと思います。でも、本当にどうにもならない事実がそこにあったら?
ここカクヨムでは「書く者」「読む者」双方が交流できる場所だからこそ、その両方に読んでいただきたいと思う素敵なメッセージの込められた作品に出会うことが出来ました。
この作品を読んで、「出会い」の大切さというものを感じてもらえたらと思います。
大好きな作家の世界観に浸りたくて、その地に引っ越しまでしてきてしまった、この物語の主人公・原田眞夜。
今日は、その作家の新作を手に入れた。
逸る気持ちを抑えきれず、近くのコーヒーショップに駆け込んだ。いざ、物語の世界へ。
その想いに水を差すかのように、彼女のスマホが震える。友人からのメッセージだった。それをきっかけにしてたどり着いたアカウントには……、先生が筆を置く、つまり作家を辞めると書かれていた。
物語は、緩やかに時間が流れる、地方の一都市を舞台に紡がれている。素敵な街だ。
主人公にとっては、筆を置くことを考え直させることができるのか、緊急事態でもある。
その差が、物語に深みを与えてるように感じるのは、わたしだけだろうか……? 最初に抱いていた説得が、次第に感謝に変わり、そして、真実を告げられ後悔に変遷していく様は、感動的でもある。
どこかで一人でいるあなたへ……との書き出しが、物語の終盤に繋がった時、暖かい気持ちになれた。優しさとかさなった伏線だった。素敵な物語に出逢えたと、わたしは思う。
あなたには、推し作家がいらっしゃいますか……?