そんなスペックで宇宙船で活躍できるとでも?

ちびまるフォイ

エイリアンより恐ろしい存在

「それではエイリアン最終面接をはじめます。

 面接に合格した一匹は晴れて宇宙船に送られますので頑張ってください」


面接官は目のさめるような美人だったが、

人間基準の美的感覚を持たないエイリアンたちには関係のない話だった。


1匹目のエイリアンが面接部屋にやってくる。


「あなたの特技を教えて下さい」


「はい。私はどんな生物にも変化することができます」


「やってみてもらえますか」


エイリアンは瞬時に面接官そっくりに変化した。

双子以上に見分けがつかない。


「どうです? この能力があれば宇宙船のクルーにも気づかれずに襲撃できます」


「たしかにそうですね」


「でしょう? 合格ですか」


「いいえ不合格です」


「なんで!?」


「人間は騙せるかもしれませんが、機械は騙せないでしょう?」


「そ、それは……」


「最新の宇宙船しってますか。もうすんごいんですよ。

 クルーの体調変化を細胞単位でスキャンして管理しているので、

 あなたがいくら表面を取りつくろえたとしても瞬時にバレます」


「なんてこった……」


変身が自慢のエイリアンは宇宙船に送り込まれることなく、とぼとぼと帰っていった。



次にやってきたのは顔の長いエイリアンだった。


「あなたはどんなことができますか」


「キシュシュシュ。俺の体には酸の血が流れているぜ」


「はあ……それが?」


「わからないか。人間が銃で応戦してもかえって被害を増やせる。

 それに俺の繁殖能力はハツカネズミの40倍。数で圧倒するぜ」


「えっ……と、あなたは宇宙船に配備されている最新の装備をご存知で?」


面接官はモニターに写真をうつした。


「最新の宇宙船では壁に穴が開くからと重火器は使用していません。

 その代わりに、瞬間冷却できる武器が携行されています」


「ギシュッ!?」


「こんなんで凍らされたら酸の血なんて意味ないですよ」


「キシュ……」


エイリアンはしょぼんと落ち込んでしっぽをさげた。



その後も、代わる代わる様々なエイリアンがやってきたもののことごとく不採用となった。


「ぷるぷる! ぼくはみずのからだでうちゅうせんのくるーをたおします!」


「異物検知された段階で宇宙船から自動で放り出されちゃうんですよね……」



「ふはは! 私は透明だからクルーに気づかれることはない!」


「宇宙船には熱感知センサーがたくさんあるんですよ」


発達しすぎた現代科学にすべての宇宙人は追いつけてなかった。

困ったのは不採用となった宇宙人以上に面接官のほうだった。


「どうしよう……一匹も合格できてない……」


これからエイリアンを宇宙船に派遣して、

船内のクルーたちを倒していく契約だったのに、

一匹もエイリアンを提出できないのは問題だった。


かといって、雑にエイリアンを採用して宇宙船に送り込んでも

すぐにバレてエイリアンを始末されて結果を残さなければ、そっちはそっちで問題になる。


結局、すぐれた科学の包囲網を突破できるエイリアンは現れなかった。


「もうこれしかない……とにかくエイリアンを提出しなくちゃ……」


何も提出しないわけにもいかない面接官は、

しかたなく自分をエイリアンだと名乗って宇宙船へ搭乗した。

船内クルーをやっつけるアイデアなどひとつもなかった。



面接官が宇宙船に派遣されたあと、


「彼女は俺のものだ!!」

「なにを!! 誰よりも近い場所にいるのは俺だ!」

「お前らふざけんな! 勝手に自分のものにするな!!」

「このやろー! ぶっころしてやる!!」


美人の面接官により、宇宙船のクルーたちは全滅した。

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そんなスペックで宇宙船で活躍できるとでも? ちびまるフォイ @firestorage

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