21歳の誕生日
星海棗(ひとみなつめ)
ありがとう、さようなら。
大学3年生、日々平凡に生活をし、それなりに友達がいた。けど、毎日は淡々と過ぎていく。
なんも刺激のない毎日。
そんなことを思いながら毎日を過ごしている。そして、いつものように次の日の課題を終えて、友達から来ていた15件のLINEに返信をしていく。
「また、あの子の彼氏の相談か。興味ないな。表向きの友達、いつも彼氏の自慢。飽きたな。私、興味ないし」
そんなことをぼやきながら、ベットに横になった。
《ゴンゴンゴン》
突然、大きなノック音が部屋中に鳴り響く。
窓に近づいて、カーテンを開けた。
だが、外には誰もいなかった。私は、ベットに戻って腰をかけた。その時、また、ノックをする音が聞こえた。私は、知らないふりをした。
「風なのか、台風来ているようなこといっていたしな。」
だが、どんどんノックの音が大きくなってくる。
「何だろう。誰だろう、こんな夜に。」
私は窓に近づいた。その時突然、施錠してあるはずの窓が勝手に開き、外から髪の長い女性が入ってきて、私の手を掴み、引っ張られた。私はよろけてそのまま外に放り出された。
私は驚いた。だが、どうしてか、誰かに似ているような、どこかで会ったようなそんな気持ちになった。私は、その女性に手を掴まれ連れて行かれた。暗闇の中、何分かいや、何時間か、無言で歩いた。どんどん森が深くなってくる。
私は、このまま家に戻れないのかな
そんなことをふと思った。そんな時、女性はこちらを振り返り、力強く言った。
「あの機関車に乗って。早く。」
私は怖くなり、全速力で走り、機関車に飛び乗った。私が乗った途端に機関車が発車した。女性はその瞬間に消えてしまった。
なんだ、あの女性、鬼なのか?けどこれで帰れるのかな。私が変な世界に迷い込んだから帰るために機関車まで案内してくれたのか。
そんなことを思っていた。
機関車は、ただ白い雲のような空間を走っていた。少しだけ電車の中散策してみよう
、誰か乗客居ないかな、そんなことを思い散策をするが乗客は誰もいない。駅もなく、ずっと走っている。
「これが、もしかしてよくTwitterでトレンドに入るきさらぎ駅なのか?」
そんなことをぼやきながら少し怖くなってくる。
突然、機関車が止まった。そこは、なぜか見覚えのある公園だった。
「あれ?私、この公園、なんか知っているような」
そう考えていると外から笑い声が聞こえてきた。女性の笑い声だった。
「え?私の声?しかも、このもう1人の声、、、」
思い出せないけど、この声は、私の知っている声だった。私と誰かが話している、けど内容は全く分からない。それでも聞いたことのある声だった。
機関車は再び発車した。また、ある程度走ると、動物園みたいなところに止まった。外から声が聞こえる。
「何度聞いても私の声だわ。」
そう思っていると、さっきも聞いた、同じ女の子の声が聞こえてくる。それでも思い出せない。誰の声なんだろうか?私はずっと考えていた。
また機関車が発車する。その時、突然私は、1人の女の子の顔が浮かんだ。私と仲良かった子で、隣の家に住んでいた子だった。いつも一緒に帰ったり、アイスを食べたり、ゲームをしたり。そして、機関車が止まった公園、あれは、中学生の時に私が彼氏に振られて大泣きした日に一人で座っていたら、彼女が迎えにきてくれた公園だった。あの動物園は、私が小学生の時に迷子になって、探しに来てくれた動物園だった。私は、家族が共働きで家に帰ってくるのも遅くいつも1人だった。そんな時よく遊んでくれたのが彼女だった。彼女の親も私の親と同じで、お互い同じ状況同士って事でいつも側にいてくれた。気づいたら私、彼女のことが好きだったんだ。すごく大切な大切な友達だった、もはや、家族だった。
と思い出した瞬間機関車が消え、真っ白な世界にさっき、私を連れてきた女性がやってきた。
「やっと、私のことを思い出してくれた。私、あの日、あなたに逢いに行こうと思ったら、事故で死んじゃって、あなたに会えなかったのがほんとに悲しくて、お誕生日おめでとうって言いたかったのに、それが悲しくて。」
と彼女は泣きながら私のことを見ていた。その瞬間、彼女は足の方から消え始めた。
「これでやっと、私は、あちらの世界へ行けるわ、本当はもっとあなたと一緒にいたかった。けどね、人っていつ終わりがくるか、分からないものよ。私が早かっただけ、先に行って遊んで待っているわね。だから、あなたはこの世界を私の分まで楽しんでから来てよ?約束ね、守るまでは来ないでね。」
と彼女は微笑んだ。
「○○ちゃん。」
強く名前を叫ぼうとしたけど、言えなかった、濁ってしまった、しっかり言えなかった、嗚咽した、顔じゅうがびしょ濡れになっていた。
「もっと、もっと、話したかった。私、この世界を楽しんでから行く…」
そう伝えると彼女は微笑んで消えてしまった。
とその時、私は、窓のそばで目覚めた。少し甘い香りがした。彼女が好きだった、クチナシの花の香りだ。
翌日、私は、彼女のお墓を訪ねた。そして、彼女の大好きなクチナシの花をたくさん供えた。
「私、たくさん、たくさん楽しむね、この世界を。」
うん。と言われたような、どこかで見られているようなそんな気がして、私は微笑んだ。高校生の時、突然知らされた彼女の死から、私はあまりにも辛すぎて彼女の存在事、記憶から消してしまっていた。けど、私には本当の友達がいたようだった。
「私、21歳の誕生日おめでとう。」
そんなことを空にぼやきながら、私は帰ることにした。
素敵な誕生日プレゼントだ。
21歳の誕生日 星海棗(ひとみなつめ) @rotbuch
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