異能を駆使して繰り広げられる、伯仲の(でも静かな)攻防

 物理的ではなく観念的に(=比喩または俗語的な意味で)、意図した目標を〝炎上〟させる能力を持った少女、カオリの物語。

 いわゆる「異能」、超常的な特殊能力を備えた人の活躍を描いた短編です。
 何が魅力かってまずその能力そのものの特性がすごい。上記の〝炎上〟からして独特で、それがただ風変わりというだけでなく、きっちり物語の面白みとして使い切られているところが最高でした。
 この〝炎上〟でなければ成り立たなかった物語でありキャラクターであると、はっきり実感できるのが本当に楽しい。

 読み進めるごとに転遷していく、この展開の振れ幅のようなものが好きです。
 あるいはそのように緻密に練られた筋というか、とにかく先が気になってぐいぐい読まされてしまう。

 いわゆる「異能バトル」、とひと口にそう言い切ってしまうと語弊があるのですけれど、それと同種の伯仲の攻防を、画的にド派手なアクションなしに実現してしまう〝からこそ〟の面白さ。
 一見変わった異能を、でも存分に物語として作用させた、非常に読み応えのある物語でした。

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