ロクノマエの用心棒

満梛 平太老

ロクノマエの用心棒

 こっちの世界とあっちの世界を繋ぐ異世界の門戸、その名を「ロクノマエ」という。

 此処、ロクノマエには、今日も転生希望者が後を絶たない。

 

 しかも近頃では、地球という小さな惑星のさらにちっぽけな島国から、押し掛けるように次々と黒髪の人間がやって来る。

 そいつらが言うにはとにかく「転生したい」だけで、生まれ変わりの根源となる意志らしいものが、皆目かいもく見当たらない。

 要は、お莫迦さん、ばかりである。

 

 そういった、まだまだ転生するには早い莫迦者達を、元居た世界へ送り返す仕事を、ロクノマエでは行っている。

 

 神は、このロクノマエの選別を、こっちの世界とあっちの世界の許容可能な包括的精神の限界質量のバランスを保つ上で、非常に重要な任務であると考えている。

 そのため、ロクノマエの用心棒には、神によって特別な権限が与えられた、その権限とは…

 

 「死者ヲ再ビ死ナス」コト、であった。


 今日も永遠の中、太陽も月も朝も夜も同時に存在するところ、ロクノマエは慌ただしい。


 実存する幻影に建つ異世界への門戸は、通るも引き返すも自由ではあるが、此処を通るには契約が必要であった。

 

 その契約書の受け渡しや、転生理由の聴取等々の実務を行うのが関所の番士である。

 転生希望者と直接に関わる役回りは、ここぐらいなもので、重責ではあるが、座り仕事で体力的には楽な仕事であったため、関所の中で人気は高かった。


 しかし、番士達は、ここ何年も続く混雑に辟易して、業務は雑になり同僚との馴れ合いも重なって、事故はいつでも起こり得る、といった状態であった。

 

 「休憩まで、あと何人?」


 中背の番士は、大柄な番士に尋ねた。


 「一人だ」


 大柄な番士は返事をすると、頬杖をついて休憩前の最後の一人を呼び込んだ。

 入ってきたのは、無精髭でやつれた黒いスーツ姿の転生希望者だった。


 「おいおい、また黒髪か、最近多いんだよな、お前んとこの国から来る人間がさ、一体お前らの国はどうなっているんだ?まだまだ青臭い連中が転生以外に夢がねえなんて、相当終わってるんだろうな」

 

 大柄な番士はそう言うと、男の前世の資料にざっと目を通した。


 「名前は「流部 孟太」ナガレべ モウタね、独身で彼女は無し、仕事は住宅リフォームの営業マンで成績は最下位。残業代も出ず休みもなく働いて、気付いたら通勤電車に飛び込んで死亡ね、そりゃ死にたくもなるか、取り敢えず、この契約書読んで転生するか、元居たところへ戻るか考えな」


 言い終えた大柄な番士が、散切り頭を掻きながら、片手で契約書を差し出すと、流部は何も言わずに契約書を受け取ると、黙ったまま俯き、契約書に目を通した。


 流部の契約書には、元の世界で更生して欲しいという、神の願いも込めて、以下のような事が書かれていた。


—————————————————


神を甲とし、流部 孟太を乙として、乙の転生に関して、次の通り契約を締結する。


本契約に定めのない事項又は本契約の内容等に疑義が生じた場合には、その都度、神法を踏まえ、誠意をもって甲乙協議の上、取り決めるものとする。


(転生先)


第1条 甲は、乙に転生先「砂粒」に関する(以下「本件転生先」という。)を提供し、乙はこれを受諾し、本件転生先の目的を理解して誠実に転生を遂行する。


(転生期間)


第2条 甲が本件転生先を乙に提供する期間は、1000年としその期間は転生世界でのみ輪廻することとする。


(契約の解除)


第3条 乙は、本契約期間中であっても、契約の相手方が本契約に違反したときでも、本契約を解除することはできない。

2 甲は、本契約期間中であって、乙が本件業務を実施することが困難であると認めたときでも本契約を解除することができない。


(報酬等)


第4条 本件に関する報酬は、無しとする。


—————————————————

 

 まぁ、かなりの悪条件で、ほぼ違法である。


 統計的に見て、大半の6、7割の者は、この契約書を読めば素直に元の世界に引き返す。


 2割程が駄々をこねるが、刀をチラつかせて少し脅かせば渋々引き返す。


 1割程は変わり者がいて、このような理不尽な条件を受け入れる者、逆に条件に全くもって納得せず、脅しにも動じない者もいるが、何度か拷問にかければ降参して引き返す。


 それよりなにより、一番問題なのは二百年に一人の確率で現れる異魔人イマジンと呼ばれる化物だ。

 

 どうやら、その異魔人が今回関所にやって来た、この男、流部だとは、伴頭を含む関所の誰もが気づいていない様子であった、ただ一人を除いては...


 時を同じくして、素浪人風の一人の男が「ごぉぐぉ」とイビキを掻いて胡座をかき、ロクノマエの傍らに植えられた大きなイチョウの樹に寄りかかり、刀を抱え眠りこけていた。

 

 この素浪人風の男、名前を「樹守 然遊」キモリ ゼンユウと云う。

 

 午後の見回りに来ていた、ひょろっとした兵士が然遊を見つけた。


 「へっ、気持ち良さそうにしやがって、ただゴロゴロと毎日よくまあ寝てられるもんだぜ、これが神様に雇われた用心棒とは聴いて呆れる、然も俺の方が安月給なんて、全く不公平なこった」

 

 兵士は愚痴をこぼし、手に持った槍の柄で地面をコンコン叩きながら、その場を立ち去った。

 

 然遊のことを関所の中でよく言う者は殆どいない。


 大体が僻みや妬みの嫉妬だったり、ありもしない噂話しだったりだ。


 しかし、然遊はそんなことはお構いなしで、気持ち良さそうに時たま、むにゃむにゃと寝言を発して、寝返りを打つと放屁した。

 すると放屁を吹き流すように突風が吹き、ざわざわ揺れる葉音に然遊は目を覚ました。

 

 「ふあ〜、よく寝たよく寝た」と言って立ち上がり、Z旗柄の派手な着流しに付いた汚れをパンパンと払い落とすと、打刀一本を帯刀し関所に向かって歩き出した。


 歩き出した途端、どうやら関所の様子がいつもと違うのに気付いた。

 

「おっと、こいつはいけねぇ」

  

 然遊がいぶかったのは当然、関所の上空に暗雲が垂れ込めていたのだ。

 殆ど雨の降らないこの地で、然も先程まで雲など、ひとつも出ていなかった。

 

 違和感を感じた然遊は、刀の具合を確かめてから、少し慎重に関所の方へ歩を進めると、関所のロクノマエ側の出入り口で足を止めた。

 

 「おい、ゴンタ!準備はできてるか?」

 

 然遊は番をしていた小柄な兵士に質問した。

 

「あっ然遊さん、準備ですか?晩ご飯ならまだ先ですぜ、しかしこんな時間にこっちに来るなんて珍しいね、今日は雲行きも怪しいし雪でも降るんじゃないかな〜」

 

 小柄な兵士は答えた。

 この兵士、名は「出田 権兵衛」イズタ ゴンベエと言って関所の者には「ゴンタ」で通っている、関所では数少ない然遊の理解者でもあった。

 

 「そうか、雪か、そいつはいいや!ごんたがその様子じゃ誰も気付いてねぇようだな、おい、ゴンタ!今は戯言はいらねぇよ、すぐに鐘鳴らしてこい!」


 「へい!合点だい!」

 

 ゴンタは直ぐ様、やぐらに登ってカン!カン!カン!と半鐘を打ち鳴らした。


 鐘の音は関所の敷地全体に響き渡った。

 すると、普段は時刻を知らせる鐘の音が今頃鳴ったので、何事だと云う顔つきで、非番で宅内に居た者や、事務や雑務に追われた者などがぞろぞろ表に出てきた。

 

 「ゴンタの野郎、なんだいこんな時間に鐘なんか叩きやがって、気でも狂っちまったのか」

 

 「いや、なにかあったんだろ、いくらゴンタだって理由も無く鐘は叩かないさ」


 外に出てきた者達があれこれと話していると、然遊が「すまねぇ、通るぜ」と言って人集りに割って入り、人集りの中央に来ると大きな声で話し始めた。

 

 「おい、てめえら、よぉく聞いてくれ、これから話すことは嘘じゃねぇ、いいか今ここロクノマエの関所に異魔人イマジンが現れた、時間がねぇから手短に言うぜ、とにかく武器持って両方の出入り口を塞いどいてくれ、滅多に言わねぇお願いだ、頼むぜ」


 それを聞いた者たちは然遊の口調や肉体からほとばしる殺気の様な気配、これから修羅場に向かう男の本気度を感じとり、素直に言うことを聞き入れて、武器を手に取り両方の出入り口を塞いだのだった。

 

 然遊はそれを確認して頷くと、「よし」と独りごちた。


 その少し前、流部はというと、番士から受け取った契約書をびりびりと破いて空中に投げ捨て、血走って瞳孔が開いた目を更に見開いて、大柄な番士をギョロっと睨みつけていた。

 

 「おっ、おい、なんだい、変な気起こすなよ」


 大柄な番士は後退りすると、畳の縁で躓いてドンっと尻持ちをついた。


 そんなことはお構い無しに、流部は何やらブツブツと呟きながら、沸沸と隆起する肉体に凄烈せいれつなまでの殺気を漂わせて、じりじりと間を詰めていく。

 

 大柄な番士の額には、脂汗がしたたった。


 「た、頼む生まれたばかりの娘がいるんだ、な、止めてくれ!」


 大柄な番士は哀願するのだが、人心を無くした流部に、慈悲や情などというものは何も無い。

 

 「...最強...使い…」と何やらブツブツ呟きながら、左手で大柄な番士の首を掴むと、全身の膨張した筋肉を確かめるように、ゆっくりと持ち上げた。


 「うっ、ぐえっ」と呻き、宙に浮いた両の足をジタバタさせ踠く大柄の番士は、ひたすら流部の腕を引き離そうと精一杯の力で抵抗した。

 

 しかし、天魔の如く変貌を遂げた流部は、凡人の及ぶところに非ず、抵抗は無残にも、梨のつぶてとなりにけり、なのであった。

 

 一度身を震わせた流部は、グワァっと口を開け、ゴォォッと唸り声を上げ、容赦無く大柄の番士の首を握り潰した。

 その瞬間ブチッと、肉体が千切れる音がして血飛沫ちしぶきが辺り一面に飛び散ると、次いで頭と胴体が分断され、床に落ちた。

 そして、ゴロッと転がった頭が示しを合わせたように、中背な番士の前でピタッと止まると、お互いの視線がぶつかったのだ。


 その悲痛な顔つきに中背な番士は、突然に生命が絶たれた事への未練や、愛する家族との別離に対する痛嘆つうたん、虫けらの如く殺されたことへの忸怩じくじたる思いを感取した。

 

 だが、目の前に血潮で紅く染まった流部が憤激した形相で、じりじりと近付いてくる。

 その現実の恐怖が、同僚との離愁りしゅうに浸ることを一切許さなかった。


 先程までの凄惨な光景と、流部の鬼気に竦んで腰を抜かしてしまった中背の番士は、自分の死が近いことを悟ると、目を瞑り残り僅かの生命にこれまでの感謝をして、その時を待った。


 しかし、暫くしても特段何の変化も無いので、死とはこんなものかと思っていると、自分の身体の違和感が他人の身体を通じて伝わってくるような感覚に疑念を感じ、目を開けると、「ん、誰だ?」理由は分からないがそう言ってしまった。


 そのうちに中背の番士の存在は何かに溶け合うように消滅していった。

 遠のく意識の中で薄らと見えたのは血だらけの番所と二人の番士の死体だった。


 最後の瞬間、中背の番士が悟ったのは流部の一部になった…ということ。


 魂を食す化け物に成り果てた流部の肉体は、人であって最早人では無かった。

 肌は赤味のある薄紫に変わり、全身の血管が浮き出ており、ドクドクと血が流れるのがわかる。

 筋肉は躍動し、その活躍を期待していた。


 そして、相変わらずボソボソと「...すれば...剣士...魔法…」と言いながら、面番所を後にした。


 異魔人イマジンの出現に禍々しい妖気が立ち込めるロクノマエ、上空を覆う黒雲はバチバチと雷鳴を轟かせていた。


 「早くしねぇとな」そう言って然遊は関所内をぐるっと見渡した。


 すると、面番所の上空が一際黒雲が濃く、稲光も凄まじいのを見つけ「あそこか…」と言って一目散に駆けつけると、すぐにバンッと勢いよく戸を開けた。


 だが、時すでに遅く、無残にも二人は殺されて手遅れの状態「こりゃひでえな」と思わず声が漏れた。


 相手の力量は死体の様子をみてすぐに分かった、二人の番士に手を合わせて外へ出ると、少し強張った体に武者震いが起こった。


 近くに流部がいることがわかる、凄まじい妖気が辺りの空気を重苦しくしている、刀の柄に手をかけ、然遊がゴクリと唾を飲み込んだ。


 その時だった、極大な稲妻が空を貫き腹をつんざく重低音が鳴り響いたと同時に、番所の屋根からドン!っと何者かが飛び降りてきた。


「現れやがったな、異魔人…」


 異魔神と化した、流部だった。


 然遊は反射的に抜刀した、その一瞬で一太刀を流部に浴びせる。が、挨拶がわりの一刀は流部の硬くなった皮膚を斬り裂く事は出来ず、弾き返された。


 「グォっ、ゴォ、グゥォー」


 流部は何かに悶えるように叫んだ。


 叫び終えると両腕を大きく掲げて、体を震わせて然遊に飛びかかって行って、右の拳で頭の辺りを殴りつけた。


 然遊は刀で其れを受け止めたが、余りの衝撃で、ずずっーと地面を擦りながら後退した。


 然遊は一旦間隔を空けて様子を伺う事を考えたが、流部がそれを許さず、続け様に更に間を詰めて今度は肥大したてのひらで右、左と連続して何度も何度も掌底を打ち込んでくる。


 然遊はひたすら受け流して凌いではいるが、防戦一方で反撃の兆しが見えてこない。

 その様子を遠くから見ていた関所の者達は固唾を呑んで見守っていた。


 そんな中、ゴンタは居ても立っても居られずに然遊の方へ近づいて行って、大声で発した。


 「然遊さん!そんな奴に負けたら夕飯抜きと、オマケにその後、神様と接吻ですぜー!」


 小柄な体を何度もジャンプさせて両手を振った。


 「へっ、神様と…そいつぁちぃっと勘弁だぜ、おいゴンタ、そろそろ晩飯の準備しとけ、それとな風呂も焚いとくんだぜ!」

 

 「へい、そう来なくっちゃ、合点だい!」


 ゴンタの叱咤に息を吹き返した然遊は、グッと足元に力を入れて、流部の攻撃をバシッと弾き返して問いかけた。

 

 「ちいと遅くなってすまねぇが、俺の名前は樹守キモリ 然遊ゼンユウ、お前さんはなんて名だ」

 

 「ヌォグォデヴェルヴモォウダ」


 「そうかい…すまねぇが上手く聞き取れねぇ、ヌガデビルでいいか?」


 「グォ、クォ、グォオー!!」


 流部は咆哮を上げた。


 「おっ!いいってことだな、それじゃあ遠慮無く行くぜヌガデビル!」


 意気軒昂として然遊は再び身構えると、攻撃の姿勢に転ずる、流部を中心にして摺り足でぐるりと回り、一周したところで大きく飛び跳ねると、落下する勢いを利用して、流部の脳天に刀を突き刺した。

 そして、突き刺した刀をぐるっと回してから引き抜いて、一旦距離を取った。

 流部は頭部を抑えて大声で叫び、悶え苦しんでいる。


 次いで、然遊は目を瞑ると刀を真っ直ぐ上に上げ背筋を伸ばして、姿勢を正して右脚を少し前に出すと、左の足のかかとを少し浮かした。

 転瞬、ほんの僅かの間を空けて刀を目掛け天から雷が落ちてきた。

 その刹那、然遊はパッと目を見開くと流部に切り掛かった。


 雷鳴と怒号が入り混じるなか雷を纏った刀は、勢いよく、流部の左の首元から右の脇腹を斜めに斬り裂いた。

 バチッ、バチッと残存している稲妻が地面を樹状に張った後、静寂が一帯を包んだ。


 流部は一瞬の出来事に叫ぶでもなく、しんと黙って斬られた首元を手で触ると、ぬるっとした感覚が体の内部にあるのを感じとって違和感を抱いた。


 目の前には刀を振り切ったままの状態で動かぬ然遊が居るので、血の付いた手をグッと握ると殴りかかろうとして、体をいつも通り捻り、動かそうとしてみたが斬られた体はえ無く斜めにズレて、上半身はどさっと仰向けに地面に倒れ込んだ。


 すると、斬られた所から、禍々しき悪気がシューと抜け出していったようで、流部の体は先程の姿が嘘のように、元の人間の姿に戻った。そして、また、何か呟いている。


 「転生したら最強剣士か大魔法使い…」


 この言葉を何度も繰り返すと、流部は空を見上げ、右手で何かを掴もうとしている。


 然遊はその様子を傍目に、刀を一振りし鞘に収めると、こう言った。


 「おい、ヌガデビル!聞こえるか?お前さんはこれから長い間、無にすんだ、分かるか無だぜ、無ってのは説明できねぇもんだ誰も知り得ねぇんで説明できねぇでいる、でも怖がることはねぇ、ヌガデビルにも家族とか友達とかがいただろう?そいつらの悲しみに比べたら、こんなこたぁ大したことはねえぜ、なあ?分かるだろう?とはいえ神様だって慈悲があらあ、時期に許してくれるだろうよ、そうすりゃ、またヌガデビルの人生ってのが始まるんだ、但し保証はしねぇがな、あくまで俺の見解だぜ」


 流部はそれを聞いて少し安心したのか、目を閉じると最後に微笑みのような溜息をして息を引き取った。


 然遊は流部の亡骸に手を合わせると、ゴンタと二人で亡骸を担いで『ロクノマエの森』と呼ばれる、深い森の中の開けた場所に埋葬した。


 墓の上にイチョウの木を植えると、暫く情に浸ってから、その場を立ち去ろうとしたのだが、その時である、さっきまで垂れ込めていた大きな暗雲の小さな残り雲が、何か一節言いたげに雪をちらちらと降らせると、すぐさま消えて無くなった。

 

「ほら然遊さん、雪が降ったでしょ!」

 

「ああ、そうだなぁ」


 くして転生したい強い欲望によって死を選び、ロクノマエにやってきた流部 孟太はロクノマエの用心棒、樹森キモリ 然遊ゼンユウによって倒されたのであった。


 りとて、今日もまた、ロクノマエにはロクでもない転生希望者が後を絶たないのである。


 今が報われないとて、その人生に於いて、ただ、己の欲に負け、なんとなく転生したいから、という浅はかな理由だけで生命を無駄にする者に『神』は決してロクノマエの門は開かせぬ。


 神だけではない、此処、ロクノマエでは異世界最強の用心棒が黙ってはおらぬのだ。

 

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ロクノマエの用心棒 満梛 平太老 @churyuho

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