第18話 佐和山

 久しぶりに帰ってきた。大阪にいる間領地の事は父や左近に任せてばかりだった。その左近もこのところずっと大阪にいてもたったので父には負担を掛けてしまった。

「お帰りさないませ」

うたが出迎えてくる。先に手紙を送っていたとはいえ急に何人もの人間が押しかけてきたのだ苦労しただろう。相手は公家出身や有力な家の出も者達なのだ。

「苦労かけた。皆様、驚かれたのでは」

城の中を驚いたか聞くと笑いながら頷かれた。いない間にきた徳川の使者も驚いていたと言った。屋敷を建てる事で場所の打合せをしに来ていたらしい。来ていたのは本田忠勝殿とうたの甥である真田信之殿。二人とも城の中を見て苦笑していたと言われた。


 自分と父と一の台で話し合った。出家した者達の今後の扱いは一、二年したら還俗出来るように取り計らう事、五大老が屋敷を建てそこで今後は生活する事になる事を告げた。一の台は自分達のせいで立場が悪くなるのではと気にしていたが問題ないと告げておいた。面倒を見る代わりに子供達を育てて欲しいつ頼んだ。山で拾った子らゆえ丈夫に育つだろう。


「今日からここがおうちですよ」

泣く子供達を抱きしめ宥める一の台達を見ながらこれで良かったのだと思った。血は流れなかった。流すのは涙でいい。

 この地から出る事はないだろう。それでも平穏に過ごす事は出来る。いずれ元服する時は自分の養子として行えばいい。姫君達は家臣に嫁がせればいい。そうしてこれからくる穏やかな世でひっそりと命を繋いでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もし駒姫が助かっていたら 初心者 @mozikaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ