第17話 それから
三成は秀吉と二人きりで話し合っていた。五大老が聚楽第の流罪への抗議を辞める代わりに流罪地を決める形で決着がついた為だ。
「佐和山に送るなど・・・。ただの謹慎処分ではないか」
秀吉には三成に裏切られた思いがあるのだろう自分を見てくる目には怒りが込められていた。
「謀反を起こさせません。もし疑いがあるようなら一族郎党罰してください」
何かあれば自分だけでは済まないのだ。妻や父、子供達も死罪になるだろう。
「当初の刑になっただけです。太閤様の望み通りでございます」
その言葉を聞くと秀吉は一瞬嫌そうな表情をした。茶々に言われて全員死罪にしようとした事がこの件に五大老を介入させる事に繋がったのを思い出したからだ。挙句の果てにおねまで介入して来て事でおねと茶々の関係のまずさを知られてしまった事も痛いと考えていた。おねは無言の圧力がる。茶々にはない政治的な力だ。子飼いの将と言われる者達に対して強い影響力がある彼女が命じれば普段仲が悪い者達も協力して事に当たるだろう。茶々では無理だ。その事が茶々の立場をより不安定にしている。後継者の生母というだけではおねには勝てないと思っている。二人が協力してくれたらここまで不安にならずに済んだのにと思った。
「おねからは他に何を言われとるんじゃ。男児の事もか」
おねはきっと佐吉に秘密裏に助けるように言っているんだろうと思った。
「一の台達を実質謹慎処分にした以上、出家させた者達は少しして還俗しなけれなばなりません。でなければ刑に不平等が。男児は某が人目につかない場所で処分します。幼子の首を晒したりするのは評判を落としますゆえ」
「人目のない場所でか。亡骸は穴でも掘って捨て置け。後は獣が処理するだろう」
おねはこれで満足するだろう。確認するのは刑を実行した佐吉だけ。秀次の子は死ぬのだ。たとえ似た子供がいてもそれば他人の空似だ。茶々も満足する。首は晒す事をしないのはお拾の為、豊臣家の評判を落とさない為。何よりも近江の者が浅井の血と豊臣の血を継ぐお拾を裏切る事はないと思っているから納得するだろう。ましてその亡骸は惨めな扱いを受けるのであれば尚更。
関白秀次に関わる全ての事が終わった。正室を始め子を産んだ側室や姫君達は佐和山へ流罪となり他の側室等は出家させらた。男児は石田治部とその家臣らによってひっそりと処分された。
男児を産んだ側室達は最後まで子供達を案じていた。せめて苦しむようにと。
三成は左近と数人の家臣を連れて人里離れた山奥に来ていた。幼い子供達をこれから処刑しなけれなばいけないのだ。雑に掘られた穴に亡骸を埋めていく。親と離れ泣く子供を見るのは辛かったが割り切りすべき事した。
「こんな風になるとは思いもしませんでしたよ」
左近が話しかけてくる。埋められた穴を見ながら左近はこれでよかったのか聞いてくる。
「帰るぞ」
これでいい。もしかしたら途中で親を失った子供を拾うかもしれない。拾い子は丈夫に育つらしい。拾った子は最近子供を失った母親に渡そう。お互い仲良くなれるばずだ。
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