Life-Interval 隠さなくていいんですよ?

 それはマイホームにて日曜大工に励んでいた、とある昼下がり。


「ジンお兄ちゃん。レキとイチャイチャしよ?」


 レキは瞳をうるうると潤わせながら、


「ジンちゃん。ユウリママに甘えたくありませんか~?」


 ユウリは両手に哺乳瓶とおしゃぶりを持ち、


「ジン様。なんなりとお申し付けくださいっ」


 リュシカはきゃぴきゃぴした様子で、そんなことを言い始めた。


「え、なになに怖い怖い怖い……!」


 俺は恐怖を覚えて、急いで彼女たちから距離を取る。


 すると、ユウリは不服そうに頬を膨らませた。


「ちょ、ちょっと! なんで嫌がるんですか!」


「真っ昼間から変なテンションで迫られたら誰だってこういう反応になるって!」


「迫ってません! ちょっと聞きたいことがあっただけです!」


「なおさら、怖くないか!?」


「ユウリ、落ち着いて。どうどう」


 普段よりも幼げな雰囲気の服を着たレキがユウリを抑える。


 代わってリュシカが前に出てくる。


 ちなみに彼女はメイド服だ。……和服美人のメイド姿はギャップがあって良いな。


「ほら、私たちももうずっと長く一緒にいるだろう?」


「まぁ、旅の期間も含めるとそれなりに。それがこの奇行に関係あると?」


「ああ、大ありだとも。それもかなり重要な問題に」


「わかった。話を聞こう」


「ちょと待ってください! なんで私の時と対応が違うんですか!?」


「どうどう」


 リュシカがいたって真面目な表情でそう言うので、俺もちゃんと聞くことにした。


 ほら、ユウリだとどうしてもそっち方面の話なのかって先入観が出来てしまうし……。


「実はね、ジン。賢者の私をもってしてもわからないことがあるんだ」


「リュシカですら……?」


「ああ。だけど、ジンにならわかるかもしれない。そう思ってね。ぜひ意見をくれると嬉しい」


「俺が力になれるかどうか……だけど、全力を尽くすよ」


「ありがとう。じゃあ、早速なんだけど――ジンの性癖を教えてほしい」


「俺の性癖か…………俺の性癖?」


 思わず聞き返すと、リュシカは神妙な面持ちで頷く。


「そうだ。私たちはジンの好みが知りたい」


「えっと……なんで?」


「ジンにもっと好かれたいから」


「ジンさんはいつも私たちに合わせてくれるじゃないですか。私たちもお返しがしたいんです」


「――というわけさ。そして、気づいてしまったんだ。私たちはジンの性癖を知らないってね」


 それでこの多種多様な服装をしているわけね。


 謎が解けて、少しホッとする。


 みんながおかしくなったわけではなかったようだ。


「……普段のみんなが好きだよ……っていうのは今は求めてないんだよな?」


 三人はそろって首を縦に振った。


 性癖かぁ……。別にこれといったものはないんだよなぁ。


 だけど、何か言わないと納得してくれなさそうだし……。


 うーん、そうだな。強いてあげるなら三人が絶対にやらなさそうな行動とかがいいよな……。


「…………足で頭を踏みつけてくれる女王様、とか?」


「……あぁ」


「ジンさんってなんというか……」


「……どこまでも尽くしたがりなんだね……」


「よし、やろう。ジンのため、ジンのため」


「ストッキングあります」


「鞭も持ってこようか」


「しなくていい! しなくていいから! いつものみんなが最高!!」


 いそいそと準備を始める三人を見て、いいお嫁さんをもらったなと思いつつも俺はすぐさま止めに入った。






◇第一巻、本日発売! みなさま、よろしくお願いします!◇


 書籍ページ↓

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勇者パーティーをクビになったので故郷に帰ったら、メンバー全員がついてきたんだが 木の芽 @kinome_mogumogu

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