百合の間にめちゃめちゃ挟まってくるダニエル
かぎろ
きょうゆい
押し倒された瞬間、わたしは「勝った」と思った。わたしと一緒にベッドに倒れ込んだ京華は、涙ぐんだ目で、わたしのことを見つめている。保健室のベッドがぎしりと鳴る。誰もおらず、カーテンもかかった放課後の保健室はわたしを襲う絶好の場所だった。わたしがそういうふうにした。京華の長い黒髪がわたしの頬に触れ、荒い息がわたしの唇にほんの少しかかる。
「結衣……!」
京華が、苦しそうな、切なそうな顔でわたしを睨む。
「私……もう抑えなくていいかなあ……?」
わたしの手首を掴む京華の手からは、震えとともに興奮が伝わってくる。
ぞくぞくっ、と悪魔的な高揚がわたしを襲った。
清楚でお堅い生徒会長が、わたしをこんなにも求めている。
みんなの前ではお淑やかで、文武両道で……誰もが憧れてしまう、篠宮京華が。
わたしだけにこんな、表情を――――。一方その頃ダニエルは天ぷらそばを食べていた! ズルズルズルズルもぐもぐもぐ! 一気にそばをすすり、「オイシイ~!」と感嘆の声を出す。その時であった。ダニエルの頭上にUFOが飛来しダニエルを吸い込み始めたのだ!
「ウワーー!! ヤメテクッダサイ!!」
「やめていいよ、京華。生徒会長だからとか、清楚でいなきゃとか、真面目じゃなきゃとか……そういうの全部やめてさ、」
「うぅ……結衣」
「いまだけはわたしを貪って。ぐちゃぐちゃにして……いいよ」
「ノゾムトコロダゼ!! ダニエル流格闘術奥義! 自爆!!」
ダニエルは自爆した。宇宙人に攫われるくらいなら自分もろとも爆破してやるの精神であった。
わたしは京華のキスが思ったよりも激しいことに動揺していた。
「あむ、ぐ、ちょっ、ちょと、んちゅ、激し、んむうっ」
「ちゅっ、ちゅる、ぷぁっ……好き……好きぃ……」
「わ、わかったから、もうちょっと優しく……」
「そんなの、今更無理だよ」
「え、ちょ、ひぁぁっ!?」
京華を誘ったのはわたしだから、わたし上位でいくつもりだったのに……このままじゃ逆転されちゃう!? ダニエルも反復横跳びしちゃう!?
「フッ! フッ! フッ! フッ!」
ダニエルはひたすら反復横跳びをしていた! それは彼の朝のルーティーン。反復横跳びが早くできたらその日は元気に過ごせるという、彼のジンクスなのだ! 保健室の扉が開いて保健の先生が入ってきた。わたしは慌てて口を噤み、とっさに京華を掛布団で覆う。
先生が戻ってくるのはもう少し後だと思っていたのに……!
歯噛みしていると、京華がもぞもぞと動き、わたしと目を合わせた。
……え。なんでこの子、悪戯っぽく微笑んで……まさか。
次の瞬間、京華の指に撫でられてわたしは思わず、
「アッヒョウ!! ソコ、ンギモヂイィ~~!!」
「ここは凝りやすいですからねー、ほぐしていきましょうねー」
マッサージ師に背中をほぐされ、ダニエルは至福の表情。しかし! マッサージ師の正体は邪教の神父! 悪しき肉体改造をダニエルに施そうと、神父の手刀が唸る!
「ヤハリナ」
だが殺気に気づいていたダニエルは回避!
神父が銃を腰のホルスターからいつでも取り出せるよう構える。ダニエルもまた、同じく腰に銃を下げている。
「早撃ち対決……そういうわけかい」
「先ニ抜イテモ、イイゼ? 俺ノ方ガ速イカラナ……」
「ほう……」
「クク……」
「……」
「……」
「!」
「!」
神父は超速で銃を抜き、ダニエルは超速で自爆した。こうして地球はダニエルの自爆に巻き込まれて滅亡した。わたしと京華は体をサイボーグ化していたので無事だったが、宇宙をさまよい続ける羽目になった。
ふたりぼっちで漂う宇宙に、億千万の星が輝いていた。
「行こっか、京華。わたしたちは、どこへだって行ける」
「うん、結衣。大好きなあなたと、ふたりなら」
背中のバーニアを噴かせてわたしたちはゆく。
きっとわたしたちは辿り着くだろう。
アンドロメダ銀河にあるという、楽園と呼ばれるあの星へと……。
一方その頃ダニエルはアンドロメダ銀河を自爆で破壊していた。
百合の間にめちゃめちゃ挟まってくるダニエル かぎろ @kagiro_
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