最後のメッセージ

「あの、どうかされました?」

振り返った先に立っていたのは、見覚えのない、しかしどこか懐かしさを感じさせる1人の女性。

「いえ、あの・・・・タイムカプセルを、掘り出していたんです。」

「タイムカプセル、ですか。・・・・懐かしいですね。」

懐かしい、そう、懐かしいと感じていたのは、たぶんその女性と君がどことなく似ていたからかもしれない。

「えぇ、懐かしい・・・・大切な思い出です。」

女性のにこやかに微笑みに見つめられながら、僕はそっと手の中の手紙を折り畳もうと目を落とし・・・・

「えっ。」

「なにか?」

「いえ、何でも。」

丁寧に手紙を折り畳んで胸ポケットにしまった。

女性は、軽く会釈をしてその場を立ち去ろうとする。

だが、とっさに僕はその背中に声を掛けていた。

何故だか、頭で考えるより先に、口から言葉が出てきていた。

「お住まいは、お近くなんですか?」

「え?えぇ、すぐ先のアパートに越してきたばかりで・・・・」

僕の声に振り返り、彼女が浮かべたちょっと戸惑ったような、はにかんだような表情は、本当に君にそっくりで・・・・

「しかし、今日も暑いですね。あの、宜しかったらそこらへんでお茶でもどうですか?」

「そう、ですね。越してきたばかりでお店もよく知らないので、教えていただけると嬉しいです。」

胸にほのかな温かさを感じながら、僕はあの場所に背を向けて彼女と共に歩き出した。

最後に君が僕にくれたメッセージ、ちゃんと受け取ったよ。

大切に、しまっておくから。

君からの手紙に書かれていた言葉。


『私の分まで、シアワセになってね。』


【終】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナツヤスミ 平 遊 @taira_yuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説