告白
中に入っている、2通の手紙。
1通は、僕が君宛に書いたもの。
もう1通は、君が僕宛に書いたもの。
(あれ、僕何て書いたんだったっけな・・・・)
『ねぇ、君の書いてくれた手紙、読んでみて。』
「あ、うん・・・」
まず、僕の書いた手紙を手に取り、広げてみる。
(うわっ・・・・)
思わず、赤面。
『ねぇ、早く。』
「う、うん・・・・」
催促され、仕方なく読み上げる。
「き、君のことが、大好きだよ・・・・」
『ふふっ、嬉しい。』
照れたように俯く君。でも僕だってもっと照れているんだ。
『じゃ・・・・これも。読んでくれる?』
残っているもう1通の手紙。
君から僕への、手紙。
「うん。」
手に取って広げ、僕はじっと紙面を見つめた。
懐かしい、君の字。
『読んで。』
「ん。」
目頭が、熱くなってくる。
それでも僕は、君の手紙を読み上げる。
「大きくなったら・・・・結婚・・・・しよう・・・・ね。」
決して、叶わない望み。
10年前の、君からのメッセージ。
「ごめん・・・・」
涙が、溢れてきた。
フッと、僕の周りの空気が動く。
『泣かないで。』
君が、すぐそばにいた。
『君のせいじゃない。君が悪い訳じゃない。』
君の小さな手が、僕の頬を包み込む。
『だからもう、自分を責めないで。』
風が触れたような、ほんの僅かな感触。
君の唇が、そっと頬に触れた。
『約束守ってくれて、ありがとう。君のこと、大好きだったよ。』
「あっ、待ってっ!」
慌てて手を伸ばしても、掴んだのは空気だけ。
柔らかな微笑みだけを残して、君の姿は夏の日差しの中に溶け込むようにして消えていった。
8年前のあの日から、僕はずっと自分を責め続けていた。
君を思い出すたびに、自分を責めずにはいられなかった。
あの日もし、僕が約束通りにあの場所へ行っていたなら。
君は死なずに済んだかもしれないと。
君は、怒ってなんかいなかったんだね。
とっくに許してくれていたんだね。
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